昨年の9月より、約5か月にわたって、
工事により長期休館をしていた川崎市岡本太郎美術館。
2月1日より、無事に活動を再開し始めたようです。
というわけで、久しぶりに訪れたら、
サインが新しいものになっていました。
なんとなく、ダンサブル。
なんとなく、ジョジョっぽい。
そんな案内サインです。
と、それはさておき。
現在、川崎市岡本太郎美術館の企画展示室では、
第26回となる岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)が開催されています。
岡本太郎の遺志を継ぎ、「時代を創造する者は誰か」を問うための賞。
それが、岡本太郎現代芸術賞。通称TARO賞です。
プロアマ問わず誰でも応募可能。
国籍、年齢の制限はなし。
さらには、表現の技法も一切制限なし!
高さ5m×幅5m、奥行き5m以内であれば、平面でも立体でもOKです。
昨年の応募数が578点だったのに対し、
今年は、595点の応募があったとのこと。
厳正な審査の結果、その中から、23名が入選しました。
ただし!
今回は、なんと、第10回より導入された岡本太郎賞、
そして、岡本太郎賞に準ずる岡本敏子賞ともに、受賞者なし。
過去に前例のない波乱の事態となりました。
なお、岡本太郎賞、岡本敏子賞こそ無かったですが、
過去に2回入選している常連(?)澤井昌平さんの《風景》や
レモコ-レイコさんの《君の待つところへ》、
さらに、構想から3年かかったという力作、
関本幸治さんの《1980年のアイドルのノーバン始球式》が特別賞を受賞しています。
さらに、特別賞を受賞した作品は、もう1点。
足立篤史さんによる《OHKA》という作品です。
作品のモチーフは、第二次大戦時に作られた航空特攻兵器「桜花」。
それが等身大のバルーンで再現されています。
なお、全面に張り付けられているのは・・・・・
桜花が開発、実戦投入された昭和19年から20年前半の新聞。
レプリカではなく、当時の本物の新聞です。
何の罪もない若者が、自爆兵器に乗り込む。
誰がどう考えてもバカげた所業なのですが、
当時の新聞記事を読むに、社会全体としては、
そんな風には思っていなかった風潮であったのがわかります。
みんなが思考停止していたのか。
はたまた、同調圧力のようなものなのか。
そして、それは単に過去の話で、現在は起こりえないことなのだろうか。
すでに現代でも起こっているのだろうか。
いろいろ考えさせられる作品でした。
さて、惜しくも特別賞を逃した作品の中にも、
個人的に印象に残った作品はいろいろあります。
まずは、仏師の西除闇さん。
彼女が制作したのは、立体曼陀羅。
その素材となっているのは、
廃棄される予定だった古い『週刊ジャンプ』です、
当時、ほとんどの読者が、何のためらいもなく、
『少年ジャンプ』をまとめて捨てていたのでしょうが。
今、こうして作品の素材にされてしまうと、
不思議と、もったいない気がしてなりません。
古紙としてリサイクルされるよりはマシなのですが。
続いて印象的だったのが、都築崇広さんの《構造用合板都市図》。
彼は、住宅建築には今や欠かせない建材、
構造用合板で作品を主に制作しているそうです。
工業製品ゆえ、反復する木目を見ていたら、
雲がたなびき、霞が立つ風景のように見えてきたそうで。
その木目を生かしつつ、表面に都市風景を描いた、
いや、正確に言えば、レーザー加工が施されています。
ただの木目が、ちゃんと雲や霞に見えるだけでなく、
現代の光景ながら、どこか洛中洛外図を想起させるのも、面白かったです。
最後に紹介したいのは、柴田英昭さん。
普段は、「淀川テクニック」という名で、
ご活躍されていますが、今回は本名での入選。
2010年から作り始めた『コラージュ川柳』を発表しています。
Twitterでたびたびバズっているので、
すでにご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが。
コラージュ川柳とは、印刷物の切り抜き3枚を合わせて作る川柳のこと。
Twitterアカウントで、毎日1句発表されています。
会場には、これまでに作られた中から、
えりすぐりのコラージュ川柳の数々が展示されていました。
どの川柳も味わい深かったですが、
個人的にイチオシしたいのは、こちらの一句。
やたらと、クリンチの多い試合だったのでしょうね。
もしくは、ワセリンを塗るコーチとボクサーが、やたらと見つめ合っていたとか。
情景が思い浮かぶようです。