現在、太田記念美術館で開催されているのは、“広重おじさん図譜”。
2018年に中山道広重美術館で開催され好評を博した、
“ゆる旅おじさん図譜”を太田記念美術館ver.として、新たに構成した展覧会です。
葛飾北斎と並んで、日本を代表する浮世絵師、
その二代巨頭に数えられる「東海道五十三次」でお馴染みの歌川広重。
そんな彼を主役にした展覧会は、これまで数多く開催されてきましたが。
今展でフィーチャーされているのは、広重の絵の中に登場する“おじさん”たち。
名も無き、というか、そもそもモデルも無き、“おじさん”たちです。
あまりに、「脇役」すぎて、「その他大勢」すぎて、
これまで意識したことはほとんどとありませんでしたが。
《東海道五拾三次之内 御油 旅人留女》にしても、
《木曽海道六拾九次之内 拾九 軽井沢》にしても。
改めて注目していると、
確かに、おじさんがいい味を出していました。
あくまで、風景や情景が主役ですが、
それは実は、おじさんたちの助演があってこそ!
そんなことに気づかされる展覧会でした。
とはいえ、展覧会では、
異様なほどの“おじさん”推しだったわけで(笑)。
「笑顔のおじさん」「がんばるおじさん」「おじさんの休憩」など、
すべての章立て、トピックに、“おじさん”のワードが入っていました。
なお、英訳でも、“Ojisan”推し。
「Laughing Ojisan」「Working Ojisan」「Resting Ojisan」となっていました。
・・・・・・・いつの間に、“Ojisan”は世界共通語となっていたのでしょうか??
ちなみに。
この展覧会は着目点もタイトルも秀逸だと思いましたが。
もし、仮に好評ゆえに、その第二弾として、
“広重おばさん図譜”を開催したなら、その展覧会は盛り上がるのでしょうか?
いや、きっと、「おばさん」と言ってしまった時点で、
方々からクレームが入り、開催すらできないことでしょう。
“おじさん”は良くて、“おばさん”はおそらくダメ。
世の中はそんなものです。
と、それはさておき。
展覧会では、“おじさん”をフィーチャーした様々な章がありましたが、
個人的に一番印象に残っているのは、「食べてるおじさん」のコーナーです。
府中宿で名物の安倍川もちを食べるおじさんや、
関ケ原で名物の砂糖餅を食べるおじさんの姿が紹介されていました、
江戸の『孤独のグルメ』。
江戸の井之頭五郎です。
“そうそう、これだよこれ!
餅はこうして食べるもんだ”
そんな心の声が聞こえてくるようでした。
それから、もう一つ印象に残っているのが、
「おじさんがいっぱい」、英語で「Many Ojisan」のコーナー。
文字通り、おじさんがいっぱいいました。
いや、『太陽がいっぱい』みたいに言うなよ(笑)
ちなみに。
全体的には、楽しい展覧会でしたが、
若干、ゾッとするおじさんも混じっていました。
コーナー名は、「見つめるおじさん」。
英訳は『Ojisan Staring at Something』です。
そして、その説明には、こうありました。
ふと足を止めて、何かを一心に見つめるおじさんたち。
その視線の先には何があるのでしょうか。
見つめられているのは、もしかするとあなたかも知れません。
何そのサスペンスホラーみたいな展開?!