年齢関係なし。所属関係なし。
未発表の平面作品であれば、
基本的に何でもありのガチンコバトル的な公募コンクール。
それが、”FACE展”です。
SOMPO美術館を運営するSOMPO美術財団が、
2012年度に創設したもので、今回で11回目を迎えました。
エントリー数は、1064名。
その中から厳選なる審査を経て、
見事入選を果たしたのは、81名でした。
栄えあるグランプリに輝いたのは、
吉田桃子さんの《Still milky_tune #4》という作品です。
画面の上半分に描かれている男性は、
3人とも顔が白く、どことなく人形のようです。
と思ったら、本当に人形とのこと。
吉田さんの作品のイメージソースは、
普段、音楽を聴いている時に頭に浮かぶPVのような映像なのだとか。
彼女はその映像をダイレクトで絵画化するのではなく、
まずマネキンを加工した人形や舞台装置を作るのだそう。
続いて、それらの人形と舞台装置を動画で撮影し、映像を制作します。
そして、その映像の中から 1コマを取り出して、絵画にするのだそうです。
一体、何度手間なのか??
途方もない時間と労力をかけて、
ようやくこの1枚が完成しているのですね。
グランプリを獲るのも納得です。
なお、吉田さんの作品は、キャンバスではなく。
ポリエステルの布に描かれていました。
なので、よーく見てみると、
透けているのに気づかされます。
油彩画でも写真でもなく、
まるで、脳裏に浮かんだ光景のように感じる、
不思議な味わいの秘密は、この素材にあったのですね。
さて、グランプリに次ぐ優秀賞に輝いたのは、3名。
その中で個人的に一番印象に残ったのは、植田陽貴さんの《Whispering》です。
深い森の中に、佇む2人(おそらく男女)。
顔はハッキリと描かれていないのですが、
こちら側に何かを訴えかけているであろうことは伝わってきます。
「こっちに来るな」なのか。
はたまた、「こっちにおいで」なのか。
どちらにしても、若干、不穏な空気が漂っています。
なのに、目を逸らすことはできない。
そんな不思議な引力のある作品でした。
読売新聞社賞に輝いたのは、橋口元さんの《リズム》。
現代版のナビ派というような、
華やかで親密な空気の漂う室内画でした。
それにしてもこのキッチンは柄物、
それも、ボタニカル柄が多すぎです。
審査員特別賞に輝いたのは、こちらの4作品。
その中で個人的に気になったのは、
霧生まどかさんによるリトグラフ作品《13年目の瞼》でしょうか。
パッと見、何が描かれているのか、
今一つよくわからなかったのですが。
近づいて観てみたら・・・・・
びっしりと絆創膏が描かれていました。
しかも、キズパワーパッドでなく、昔懐かしのタイプの。
自分は妙に惹かれるものがありましたが、
集合体恐怖症の人は、どうぞお気をつけくださいませ。
なお、惜しくも受賞を逃した入選作品の中にも、
個人的に惹きつけられる作品は、多々ありました。
中でも、注目したいのは、
昨年に引き続き今年も入選した石原陸郎さん。
なんと現役高校生とのこと。
現段階でこれだけの大作を仕上げられるなんて。
将来が有望にもほどがあります。
ちなみに。
見やすさを考慮しているのでしょう、
入選作品は人物画や風景画、抽象画といった具合に、
同じようなテイストの作品ごとに、カテゴライズして展示されていました。
ただ、あまりに似たような作品が並んでいると、
もはや誰が誰の作品なんだか、わからない感じに。。。
出展作家は、この展覧会を通じて、FACE(顔)を売りたいはず。
もう少し、それぞれの個性を引き出せるように、
似たテイストの作品は分けて展示しても良かったような気がしました。