現在、根津美術館で開催されているのは、
“仏具の世界 信仰と美のかたち”という展覧会。
ありそうで意外と無かった、仏具を主役にした展覧会です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
一口に仏具と言っても、その種類はさまざま。
仏教の儀式で使う道具もあれば、
銀象嵌梵字宝相華文香炉 朝鮮・高麗時代 13~14世紀 根津美術館蔵
袈裟のように、僧の生活必需品もあります。
黒紅練緯地橘亀甲花模様葵紋入七条袈裟 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵
さらには、密教で使われる密教法具の数々もありました。
こちらの独鈷杵(とっこしょ)や、
独鈷杵 日本・平安時代 12世紀 根津美術館蔵
五鈷鈴(ごこれい)も密教法具の一種です。
五鈷鈴 日本・平安時代 12世紀 大師会蔵
先端をよく見ると、槍状になっていますね。
実はもともと、古代インドの神々が持つ武器だったのだそう。
確かに、これらで刺されたらダメージが大きそうです。
とはいえ、大きさは手のひらサイズ。
古代インドの神々の戦いは、肉弾戦だったのですね。
『クローズZERO』的な。
ちなみに。
こちらの台の上に乗ってる羯磨(かつま)なる密教法具も・・・
羯磨および台 日本・江戸時代 17~18世紀 根津美術館蔵
もともとは、投げて攻撃するタイプの武器だったのだとか。
もしかしたら、手裏剣はこれが派生したのかもしれません。
さてさて、展覧会には他にも、
印象的な仏具がたくさんありました。
例えば、こちらの《粉青印花牡丹文厨子》。
粉青印花牡丹文厨子 朝鮮・朝鮮時代 15世紀 根津美術館蔵
持ち運びに便利で、スペースも取らない、
コンパクトなタイプ(?)の陶製の厨子です。
全体的に左肩上がりで、若干歪んでいる様子が、
『サザエさん』のEDに登場する家を彷彿とさせるものがありました。
また例えば、こちらの幡。
右:白綸子地花立涌葵藤団扇模様染繍唐幡 日本・江戸時代 弘化4年(1847)銘 国立歴史民俗博物館蔵
左:白綸子地立涌四季花模様小袖 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵
幡とは、仏や菩薩の威徳を示すための仏具で、
法要や説法の際に、寺院の境内や堂内に立てる飾り布のこと。
展示ではその横に、参考として小袖が展示されていました。
というのも、実は、この幡はもともと、
武家の女性が着ていた小袖を仕立て直したものなのだそう。
なんともSDGsな仏具です。
最後に紹介したいのは、こちらの《獅子香炉》。
獅子香炉 瀬戸 日本・室町時代 15世紀 根津美術館蔵
その背部に周ってみると・・・・・
後頭部がぱっくり割られていました。
その容疑者(?)とされているのは、なんとあの千利休とのこと。
もともとは香炉ではなかったようですが、
千利休が頭を打ち割って、香炉に見立てたのだそうです。
狛犬(狛獅子)の頭をかち割るだなんて。
現代だったら、コンプラに引っかかりそうな気がします。
さてさて、現在、根津美術館では、
美術館顧問でもある西田宏子さんより、
陶磁器など工芸品169件を受贈したのを記念して・・・・・
“西田コレクション受贈記念展”も同時開催されています。
3期に渡って開催されるそうで、
現在はその第1弾として、“IMARI”が開催中。
受贈されたコレクションの中から、伊万里焼の数々が紹介されています。
その中で一番印象に残っているのが、こちらの《色絵紋章文大皿》。
色絵紋章文大皿 肥前 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵(西田宏子寄贈)
キャプションの解説によれば、
オランダのビューレン家のイダ・マリアと、
ブレデローデ家のヨアンの結婚を祝って、特注されたものとのこと。
皿の中央には、両家の家紋がデザインされています。
こんな昔から、しかも、ヨーロッパでも、
結婚を祝って、大皿を作る文化があったのですね。
もしかしたら、引き出物として配られたのかもしれません。
そして、「こんなの貰ってもなぁ・・・」と、
押し入れの奥の方にしまわれていたのかもしれません。
┃会期:2023年2月18日(土)~3月31日(金)
┃会場:根津美術館
┃https://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html
┃※オンラインによる日時指定予約制