1981年に、山梨県北杜市に誕生した清春芸術村。
国内外のアーティストたちの交流の場として、
吉井画廊の創立者である吉井長三によって作られた芸術村です。
かつて小学校だったというその広大な敷地には、
国内外の建築家による名建築が数多く集まっています。
例えば、こちらはラ・リューシュ。
シャガールやモディリアーニ、キスリングといった、
巨匠たちが若き日に集った伝説のアトリエ兼住居です。
設計したのは、エッフェル塔でお馴染みのギュスターブ・エッフェル。
実際のラ・リューシュは、今もパリにありますが、
清春芸術村にあるのは、設計図を買い取り、まったく同じに再現したもの。
ショップやライブラリー部分を除いて、内部に入れませんが、
外から覗き込む形で、再現されたアトリエを見学することができます。
また例えば、こちらは2011年に創設された「光の美術館」。
設計はもちろん、安藤忠雄さんです。
建物内には、一切人工照明が無い美術館とのこと。
ただ、2階に上がってみたら、
これでもかと、人工照明が床置きされていました。
おそらく美術作品だとは思いますが、
人工照明どころか、キャプションも一切無かったので、
もしかしたら、この後、これらの人工照明を取り付けるところなのかもしれません。
他にも、2006年に藤森照信さんによって建てられた茶室 徹、
新宿より移築されたという梅原龍三郎アトリエ(設計:吉田五十八)、
谷口吉生さんによる設計のルオー礼拝堂などがあります。
ちなみに。
ルオー礼拝堂の出入り口の上には、
ルオー自身が制作・彩色したというステンドグラス《ブーケ》も。
ステンドグラスのような絵画を描いていたルオーが、
まさか、実際にステンドグラスも制作していただなんて。
なお、日本でルオーのステンドグラスが観られるのは、おそらくこの礼拝堂だけとのことです。
と、ここまで紹介した建物は、
2013年に訪れた際にもありましたが、
10年ぶりに訪れたら、一風変わったサウナや、
雫のようなテントのような何やらや、
新たな建物も誕生していました。
ただ、これらについても、
光の美術館の館内同様に、特に説明は無し。
さらに、清春芸術村のメインとも言うべき施設、
谷口吉生さん設計の清春白樺美術館においても・・・。
常設展示らしきものがありましたが、
それらにも一切キャプションが付けられていませんでした。
監視員もスタッフも、人っ子一人いません。
それゆえ、誰の何という作品なのかもわからなければ、
そもそも、これが常設展示なのかもわからずじまいでした。
キャプションという概念が、忘却の空に消えてしまったのかも。
清春だけに。
せっかく、建物やロケーションが素敵なので、
ホスピタリティの無さが、残念でなりませんでした。
なお、余談ですが、ショップの一角で、
杉本博司さんの写真作品が販売されていました。
さらっと剥き出しで置かれていましたが、
お値段は、特別価格で100万円とのこと。
このショップには、スタッフさん誰一人おらず。
監視カメラらしきものも置かれておらず。
お持ち帰り放題でした(←?)。
キャプションだけでなく、
防犯という概念もまた、忘却の空へ。