現在、アーティゾン美術館で開催されているのは、
“アートを楽しむ ―見る、感じる、学ぶ”という展覧会です。
アーティゾン美術館は、開館以来、
ラーニングプログラム(教育普及)に、積極的に力を入れてきました。
開館以来続いている土曜講座を筆頭に、
小学生を含む家族で美術を楽しむファミリープログラムや、
小学校、中学校、高校、大学の教員を対象にしたティーチャーズプログラムなど、
さまざまなラーニングプログラムを提供しています。
ちなみに。
2020年から21年にかけて携わった、
『アーティゾン 子どものひろば』もその一環で作られたものです。
そんな長年のラーニングプログラムの成果をもとに、
コレクションから厳選した作品を紹介しているのが、今回の“アートを楽しむ ”という展覧会。
「肖像画のひとコマ ―絵や彫刻の人になってみよう」や、
「風景画への旅 ―描かれた景色に浸ってみよう」といった、
全部で3つのセクションで構成されています。
ただ、作品が並べられているコレクション展とは違い、
例えば、小出楢重の《帽子をかぶった自画像》のすぐ近くには・・・・・
画中のアトリエの様子が再現されていました。
さらに、絵の中の人になってみるためのヒントも用意されています。
また、作品を鑑賞するためのヒントも充実。
全体的にテキストは多めなので、
人によっては読み疲れするかもですが、
タイトルずばり、「アートを楽しむ」展覧会でした。
なお、展覧会のラストを飾るセクションは、
「印象派の日常空間 ―近代都市パリに行ってみよう」。
新収蔵品の一つであるベルト・モリゾの《バルコニーの女と子ども》と、
ギュスターヴ・カイユボットの《ピアノを弾く若い男》を中心に取り上げ、
その時代の近代都市パリの環境や社会的背景などを紹介するセクションです。
《ピアノを弾く若い男》を観るたびに、つねづね、
ピアノが全体的に低くて、どうにも足が窮屈そうだなァ、
カイユボットが誇張して描いたのだろうなァと感じていたのですが。
会場に展示されていた同タイプの当時のピアノを見るに、
決して誇張したわけではなく、
わりと忠実に描かれていたことが判明しました。
余談ですが、こちらのピアノも実は、
アーティゾン美術館の収蔵品とのことです。
コレクションに新たに加わってから、
こうしてお披露目されるのは初めてなのだそう。
2021年の新収蔵品一挙出しの展覧会でも展示されなかったレアキャラです。
ちなみに。
現在、アーティゾン美術館では、
“ダムタイプ|2022: remap”が同時開催されています。
第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展において、
ダムタイプが発表した新作インスタレーション《2022》を再構成し、
《2022: remap》として再配置した形で紹介する展覧会です。
日本のアート・コレクティブの先駆け的存在とされるダムタイプ。
そこに、坂本龍一さんが加わった最強のメンバーで制作された《2022》。
暗い空間の中で、独自のレーザー装置で壁に投影されているのは、
1850年代の地理の教科書から引用された普遍的な質問のテキストとのこと。
それを朗読した音声が聴こえるか聴こえないかの、
絶妙な音量で取り囲むサウンドインスタレーション作品です。
なお、音声を朗読しているのは、坂本さんの友人たちとのこと。
そのメンバーの中の一人に、カヒミ・カリィさんがいました。
まさに、“ハミングがきこえる”くらいのウィスパーボイス!