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芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル

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4月10日より、約1年半の長期休館期間に突入する三菱一号館美術館。

その休館前ラストとなる展覧会として現在、

“芳幾・芳年―国芳門下の2大ライバル”が開催されています。

 

 

 

幕末を代表する人気浮世絵師・歌川国芳。

その数多い弟子の中でも両頭をなす落合芳幾と月岡芳年、

最後の浮世絵師とも呼ばれた2人の絵師にスポットを当てた展覧会です。

星星

 

出展数は、約200点!(会期中、一部の作品は展示替えあり)

それらの中には、国芳スタイルを忠実に受け継いだ落合芳幾の「太平記英勇伝」や、

 

落合芳幾《太平記英勇伝 明智日向守光秀》 慶応3(1867)年 浅井コレクション(※展示替えあり)

 

 

月岡芳年の晩年の傑作、「月百姿」といったシリーズ、

 

月岡芳年《つき百姿 千代能》 明治22(1889)年 浅井コレクション

 

 

「血みどろ絵」「無残絵」とも称され、

2人がブレイクするきっかけとなった競作「英名二十八衆句」シリーズも。

 

(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

さらには、師匠である国芳の作品も充実していました。

浮世絵ファンにはたまらない展覧会となっています。

 

 

 

さらにさらに!

浮世絵だけでなく、肉筆画も充実。

閉館前ラストを盛り上げる華やかな会場となっていました。

 

 

 

ちなみに。

展覧会の目玉とも言うべきは、

月芳による「芳年武者无類」シリーズ。

神話の世界から戦国時代までの、

さまざまな武者・武将が描かれているシリーズです。

 

月岡芳年《芳年武者旡類 源牛若丸 熊坂長範》 明治16(1883)年頃 浅井コレクション

 

 

これまでも他の浮世絵展で、

紹介された機会はままありましたが。

全33図まとまって展示されるのは、今回が初めてなのだとか。

 

 

 

モチーフになっている武者は武将の中には、

源義経を筆頭に、北條時政、畠山重忠、仁田忠常といった、

『鎌倉殿の13人』でお馴染みの面々も含まれています。

鎌倉殿ロスの方には必見の展覧会といえましょう。

余談ですが、「芳年武者无類」シリーズの中で、

個人的にもっとも印象に残っているのが、こちらの作品(写真手前)です↓

 

 

 

画面右下の全身毛むくじゃらの大男は、阪田公時とのこと。

つまり、元・金太郎です。

・・・・・・・子供の時は、あんなに可愛かったのに(←本物観たこと無いけど)。

子役が大人になったら、なんか残念な感じになってしまった。

マコーレー・カルキンに通ずるものがありますね(←?)。

 

 

と、それはさておき。

月岡芳年をフィーチャーした展覧会は、

これまでに何度か開催されていますが。

その兄弟子でライバルの落合芳幾は、

芳年と比べてしまうと、どうにも目立っていない印象があります。

しかし、今回の展覧会では、芳年と並んで、ちゃんと主役に!

《与ハなさけ浮名の横ぐし》をはじめ、

 

落合芳幾《与ハなさけ浮名の横ぐし》 万延元(1860)年 悳コレクション

 

 

国芳譲りのセンスが光る芳幾の作品が数多く紹介されています。

この展覧会を機に、芳幾人気が高まるかも。

なお、そんな芳幾のもっとも大きな功績ともいえるのが、

戯作者・條野採菊らと創刊した東京初の日刊紙「東京日日新聞」です。

 

落合芳幾《東京日々新聞百十一号》 明治7(1874)年 毎日新聞社新屋文庫

 

 

これが大きな人気を博したことで、

一般大衆に新聞という文化が広がりました。

とはいえ、新聞とは名の付くものの、

当時は、ゴシップ的な記事も多かったようで。

例えば、《東京日々新聞 千四十五号》(画面手前)の記事は、こんな内容でした。

 

 

 

現在の佐賀県唐津市に住んでいたとある老夫婦の夫が、

節約して貯めた500円を棺に入れて欲しいと遺言を残し、亡くなりました。

しかし、妻は親戚のアドバイスもあって、棺には空の財布を入れたのだとか。

その初七日に、なんと鬼が現れ、

夫が成仏できていないので、金を出せと迫りました。

妻がお金を取りに行っている間に、鬼は傍らにあったぼた餅を食べて悶死。

実はそのぼた餅は、親戚が妻を殺して金を奪おうと渡した毒入りのものだったそう。

しかも、それを食べて死んだ鬼の正体も、別の親戚だったそうです。

ウソみたいな本当の話。

『ザ!世界仰天ニュース』みたいな話です。

 

 

ちなみに。

最後の浮世絵師として活躍した2人の弟子を、

師匠である国芳はこんな風に評していたそうで。

 

 

 

芳幾は器用に任せて筆を走らせば、画に覇気なく熱血なし、

芳年は覇気に富めども不器用なり、芳幾にして芳年の半分覇気あらんか、

今の浮世絵師中その右に出る者なからんと、

 

 

要するに、こういうことです。

芳幾は技術的には器用であるが、絵に迫力がなく、

芳年は絵に迫力はあるが、技術的には不器用である。

もし、芳幾に芳年の半分の迫力でもあれば、当代一の絵師になれるだろうに。

国芳の弟子時代から今日にいたるまで。

2人で1つ、それが芳幾と芳年です。

 

 

 ┃会期:2023年2月25日(土)~ 4月9日(日)
 ┃会場:三菱一号館美術館
 ┃https://mimt.jp/ex/yoshiyoshi/
 

 

 

 

 

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