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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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芸術家たちの南仏

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先日は、千葉県にあるDIC川村記念美術館に行ってきました。

現在開催されているのは、“芸術家たちの南仏”という展覧会です

 

(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

まず、会場入り口脇に投影されていたのは、

映画の発明者として知られるリュミエール兄弟が、

南仏で撮影した短編映画『ラ・シオタ駅への列車の到着』でした。

この映画が初めて上映された際に、まだ映画に慣れていなかった観客たちは、

自分たちに向かってくる列車に轢かれると思い、逃げ出してしまったという伝説も。

それゆえ、世界初のパニック映画と言われているとかいないとか。

 

何はともあれ、19世紀頃より、フランスに鉄道網が発達して

この短編映画に登場するような列車がポピュラーになったことで、

北部に住む人々は避寒のため、南へ、地中海沿岸地域へと旅行するようになりました。

それらの人々の中にはもちろん、芸術家も。

かくして、20世紀において南仏では、パリとはまた違った芸術文化が花開いたのでした。

 

そんな南仏という地域に注目したのが、今回の展覧会。

南仏にゆかりある約30作家の作品約150点(関連資料を含む)を紹介するものです。

 

 

 

展覧会で紹介されていた芸術家の中で、

もっとも南仏とゆかりある人物と言えば、やはりマティスでしょう。

 

 

 

彼は47歳の時に初めて、ニースに滞在してからは、

定期的にこの地を訪れ、一年の半分以上をホテルで過ごすようになります。

67歳からは本格的に南仏に住居を移し、この地で没しました。

また、装飾を手掛けたマティスの集大成ともいうべき、ロザリオ礼拝堂があるのも南仏。

 

 

 

まさに、マティスは「南仏を愛し、南仏に愛された男」だったのです。

なお、展覧会には、国内にあるのが奇跡ともされる逸品、

マティスの切り紙絵の集大成とされる《ミモザ》も出展されています。

 

 

 

来月には、東京都美術館で大規模なマティス展が開幕しますが、

マティスのファンならば、先にこちらの展覧会を抑えておきたいところです。

 

展覧会では、マティス以外にも・・・・・

 

 

 

陶器の街ヴァロリスで作陶をしたピカソや、

晩年コート・ダジュールに居を構えたシャガールといった、

20世紀を代表するレジェンドの作品も紹介されていましたが。

個人的には、この展覧会を通じて、

初めてその名を知った芸術家の作品にも惹かれました。

 

 

 

例えば、ルノワールと深い友情を結んだという、

アルベール・アンドレの《マルセイユのプティ・ニース》

 

 

 

海を見つめる手前の男性のポージングが印象的な一枚です。

ちょっと海を眺めるのではなく、

これからしばらく海を見続けるはず。

長期戦覚悟のポージングです。

なんか珍しい魚でも泳いでいるのでしょうか。

それとも、スマホを落としてしまって途方にくれているのでしょうか。

 

また例えば、マティスと交流があったアンリ・ルバスクの《窓》という作品も。

 

 

 

カーテンを開き、こちらを見つめる女性。

でも、決して、こちらに近づいてこようとはしていません。

かといって、招き入れてくれる気配もありません。

久しぶりに、ソーシャルディスタンスという概念を思い出しました。

 

 

さてさて、南仏というと、バカンスやリゾート、

太陽が降り注ぐ自然豊かな幸福の土地という印象がありましたが。

実は、第二次世界大戦中の南仏には、

マックス・エルンストや、ジャン・アルプ、ヴォルスをはじめ、

 

 

 

「敵性外国人」として収容されたドイツ人の芸術家たちや、

他国への亡命を目指し、港にやってきた芸術家たちも少なからず集まっていました。

展覧会では、決して楽しいだけではない、

そんな南仏の影の部分にもスポットが当てられています。

その一連で、ウクライナ地域(当時はロシア帝国領)出身の女性画家で、

ロベール・ドローネーの妻でもあった、ソニア・ドローネーの作品も紹介されていました。

こちらは、ふくやま美術館が所蔵する《色彩のリズム》という作品↓

 

 

 

初めて目にする作品なのに、どこかで見たことがあるような。

たぶん、クーピーペンシルの缶と、勘違いしたものと思われます。

 

 

ちなみに。

出展作品は南仏から来日・・・・・したものではなく、

北は山形美術館から、南は大分県立美術館、宮崎県立美術館まで、

日本全国津々浦々から集めに集めたものですべて構成されていました。

切り口を含めて、展覧会そのものに感銘を受けましたが、

南仏に関するこれほどの優品がほぼすべて国内に所蔵されていたこと、

そして、それを一堂に集めてしまったことに何より感銘を受けました。

千葉県以外の人からしたら遠く感じられ、

DIC川村記念美術館まで行くのは、やや面倒な印象があるかもしれません。

しかし、パリから南仏までは約1000㎞。

それに比べたら、全然近いものです。

南仏に行く感覚で足を運ばれてみてはいかがでしょうか?

星星

 

 

 ┃会期:2023年3月11日(土)~ 6月18日(日)
 ┃会場:DIC川村記念美術館
 ┃https://kawamura-museum.dic.co.jp/art/exhibition-past/2023/nanfutsu/

 

 

 

 

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