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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術

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現在、水戸芸術館現代美術ギャラリーでは、

“ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術が開催されています。

 

 

 

   ケアリング…ケアをする行為

   マザーフッド…母親である期間や状態

 

 

人は誰しもが、日常生活の中で他人をケアし、

あるいは、誰しもが他人によってケアされています。

そんな「ケア」にスポットを当てた展覧会です。

 

ちなみに。

サブタイトルは、「いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?」。

ちょっと質問が多すぎですね。

 

さてさて、展覧会の会場では、

石内都さんの写真作品を筆頭に、

 

 

 

国内外の15名(組)の現代アーティストの作品が紹介されていました。

それらの中には、フィリピン生まれ、下関育ち、

現在はロンドンを拠点に活動するマリア・ファーラや、

 

 

 

結成以来、一貫して、「私の記録」に注目してきたという、

AHA![Archives for Human Activities/人類の営みのためのアーカイブ]の作品も。

 

 

 

 

さらに、2018年のVOCA賞に輝いた碓井ゆいさんも出展作家に名を連ねていました。

碓井ゆいさんが出展していたのは、こちらの《要求と抵抗》という作品。

 

 

 

遠目から観ると、網のようなものにエプロンが、

それも、幼稚園の先生や保育士の可愛いエプロンが縫い付けられています。

しかし、近づいて、よくよく観てみると、

そこにはあまり可愛くない文字が縫い付けられていました。

 

 

 

実はこれらの文言は名古屋市のとある保育園で、

1972年に実際に起こった自主管理保育、そのスローガンだったもの。

もちろん、当時の保育士たちは、プラカード等で抗議していたようですが、

碓井さんが提案した(?)ように、このようなエプロンを付けて活動した方が、

ユーモアがあって、かえって大きな共感を覚えたかもしれませんよね。

 

なお、会場には、碓井さんによる授乳室も完備されていました。

小さなお子様連れの方でも、ご安心頂けますね。

 

 

 

さてさて、展覧会全体としては、

インドネシアと日本を拠点に活動する本間メイさんによる出産をテーマにした作品や、

 

 

 

出光興産の創業者・出光佐三の四女にして、サム・フランシスの妻、

日本のビデオアートを牽引してきたアーティスト、出光真子さんによる80年代の作品など、

 

 

 

映像作品が多かったような印象を受けました。

それだけに、鑑賞時間には余裕をもって訪れられることをオススメします。

ということを、HPやTwitterなどで、公式がケアしてくれればいいのに。

ていうか、作家や作品の解説も、

会場にはほぼ無かったので、そちらもノーケア。

いろんな意味で、「ケア」の大切さを痛感する展覧会でした。

星

 

 

なお、紹介されていた映像作品の中で、最も印象に残っているのは、

アイスランドの芸術家ラグナル・キャルタンソンによる「私と私の母」シリーズです。

 

 

 

ラグナル・キャルタンソン本人が、

隣にいる実の母から、唾を吐きかけられ続ける。

ただ、それだけの映像作品です。

 

 

 

誰に唾を吐きかけられるのも不愉快ですが。

実の母から唾を吐きかけられるだなんて!

 

なお、キャルタンソンはこの映像シリーズを、

毎年欠かさず撮影し続けているとのことですが、

今展では、2000年から2020年まで、

5年ごとの全5作品が紹介されていました。

こちらが、2020年の「私と私の母」。

 

 

 

そして、こちらが2020年の「私と私の母」。

 

 

 

明らかに、2020年の時より、

2人の関係が悪化していました。

だったら、こんなこと、もうやめればいいのに。

 

 

最後に、全15人(組)のアーティストの作品の中で、

個人的に一番印象に残っている作品をご紹介いたしましょう。

二藤建人さんの《誰かの重さを踏みしめる》です。

 

 

 

こちらは、体験型作品とのこと。

いつ?どこで?だれに?だれが?

なぜ?どのように?体験できる作品なのでしょう?

 

そのヒントは、向かいの壁にありました。

 

 

 

つまり、こういうことです。

 

 

 

まず1人が、下の黒い座椅子みたいな、

ベンチプレスのシートみたいなところに頭を下にして横たわります。
そして、足を2つの穴から出します。
その突き出した足の裏に、もう一人が立ちます。
そう、中国雑技団みたいな感じになるわけです。

 

1人ではこの体験はできません。

人の重さを足の裏で踏みしめてみたい方、

誰かをお誘いの上、展覧会に足を運ばれてみてください。

(↑ケアしておきました)

 

 

 

 

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