この春、国立科学博物館では、
実に4年ぶりとなる“恐竜博”が開催されています。
『今度の主役は「トゲトゲ」だ!』と、キャッチコピーにありますが。
今回の恐竜博の目玉はなんといっても、こちら↓
カナダのロイヤルオンタリオ博物館から初来日を果たした、
鎧竜「ズール」こと、ズール・クルリヴァスタトルの実物化石です。
あまりにも貴重なものゆえ、まるで宝飾品のように、
ルパン三世やキャッツアイが犯行予告をする美術品のように、展示されていました。
ところで、「ズール」という名前を聞いて、
映画『ゴーストバスターズ』を思い浮かべた方も少なくないのでは?
実は、映画に登場するズールに顔が似ていることから、
映画会社に許可を得たうえで、正式な学名に採用されたのだそうです。
また、今回の恐竜博では、頭部化石だけでなく、
ズールの貴重な全身骨格もカナダから初来日しています。
これまでに発見されたズールが属する鎧竜類の化石の中で、
頭骨から尾の骨までこれほど完全な状態でのものはないとのこと。
そんな超貴重なズールの全身骨格化石だけに360度、
それも、特徴的なトゲトゲのある背中を上から鑑賞できるようになっています。
初めて目にしたズールの背中は、
もはや恐竜の背中というよりも、地表のようでした。
孫悟空とベジータが戦った場所のような。
ちなみに。
このトゲトゲ以外にも、ズールには大きな武器があります。
それは、こん棒のような尾。
ズール・クルリヴァスタトルのクルリは脛、
ヴァスタトルは破壊者を意味しているそうです。
つまり、この強力な尾で天敵の肉食恐竜の脛を破壊するのだとか。
想像するだけで痛そうです。
などと思っていたら、全身骨格の先に・・・・・
ズールが肉食恐竜のゴルゴサウルスと戦ってる復元模型がありました。
ゴルゴサウルスの脛にちょうど、
ズールの尾がクリティカルヒットしています。
骨なのに、ゴルゴサウルスの痛そうな表情が伝わってくるようでした。
なお、今回の恐竜博では、ズール以外にも、
防御力に極振りした恐竜の数々が紹介されています。
中でもとりわけインパクトが強かったのが、
「生きた要塞」の意味を持つアニマンタルクスの背中。
干しシイタケみたいなのがたくさん乗っています。
強そうとか堅そうとか、よりも、
イイお出汁が出そう、という感想が勝ちました。
さてさて、展覧会では、防御型だけでなく、
攻撃に特化した恐竜も多数紹介されています。
その中でもやはり一番目を惹くのは、
恐竜界の絶対王者ティラノサウルスです。
展覧会には、2体のティラノサウルスの全身骨格が来日しています。
一つ(写真左)は、世界初公開のティラノサウルス「タイソン」。
全体の約6割にあたる177個の骨が見つかったもので、
ほぼ見つからないという小さな前脚の部分もちゃんと揃っています。
タイソンという名前だけに、耳を噛みちぎりそうな迫力がありました。
そして、もう一つのティラノサウルスは、「スコッティ」。
名前だけ聞くと、とっても軽そうですが、
史上最重量個体のティラノサウルスとして知られています。
1体でも画力は強いですが、ティラノサウルスが2体並ぶと、
「1+1=2」どころか、その画力は何倍にも増幅するようです。
この2ショットは一見の価値がありますよ。
なお、今回の恐竜博には、
マイプ・マクロソラックスの化石も展示されています。
ティラノサウルスの全身骨格と比べてしまうと、見た目が地味ではあります。
実は、今、恐竜界的にもっとも注目を集めている実物化石といっても過言ではありません。
「マイプ」は、国立科学博物館副館長の真鍋真さんの調査隊によって、
2020年にアルゼンチンで発掘、2022年に新種として命名された肉食恐竜です。
推定全長は9m!
ティラノサウルスが北半球の王者なら、
このマイプは、南半球の王者である可能性が高いそうですよ。
ちなみに。
展覧会のラストでは、恐竜絶滅に関するトピックが紹介されていました。
約6600万年の隕石衝突が原因で、恐竜は絶滅。
恐竜から進化した鳥類も、森林の減少によって多くが絶滅してしまったそうです。
もし、カワセミのように地中に巣を作る鳥だったら生き残ったかも。
ということで、カワセミの巣穴の模型が展示されていました。
展覧会の出口を抜けた後の通路の壁には、
国立科学博物館付属自然教育園内で撮影されたという、
選りすぐりのカワセミの写真の数々が展示されていました。
そういえば、展覧会の冒頭で紹介されていた進化の系統図。
そこにも、カワセミがちゃっかり(?)登場してましたっけ。
今度の恐竜博の主役は「トゲトゲ」ですが、
今度の恐竜博の影の主役は、「カワセミ」でした。