神奈川県西部にある小さな半島、真鶴半島。
その先端にある真鶴岬から見える三ツ石は、
パワースポットとして、人気を博しているようです。
この真鶴は、知る人ぞ知る「石の街」。
江戸城本丸の石垣にも使われたブランド石、
「小松石」という希少な石の産地として知られているようです。
さてさて、一昨年、そんな真鶴を舞台に、
“真鶴町・石の彫刻祭2021”なる芸術祭が開催されていたのだとか。
若手からベテランまで、10人の作家が参加し、
小松石を素材に新作野外彫刻を制作したのだそう。
残念ながら、その芸術祭は見逃してしまいましたが、
作品はすべて、真鶴町のあちこちに恒久設置されているそうです。
例えば。
もともと謎の石の彫刻(?)の数々が、
展示されていたらしい「石の広場」なるスペースには・・・・・
2019年には国立新美術館で大規模な個展が開催された、
国内外で高い評価を受ける現代美術家イケムラレイコさんの作品が恒久設置されています。
タイトルは、《夫婦とり》。
確かに、そう言われてみたら、鳥にも見えます。
ただ、鳥以外のものにも見えます。
ギョーザとか?
また、例えば。
夜光虫が発生することでも人気の琴ヶ浜海岸には・・・・・
今年で御年83歳の現代美術界のレジェンド、
河口龍夫さんの《石の時間》という作品が恒久設置されています。
何よりも気になるのは、表面に並んだ窪み。
もちろん人工的に作られたものです。
実は、海岸を見渡してみると。
同じような窪みのある巨石が、そこかしこにありました。
おそらく、これらは石垣や礎石に使われる予定だったもの。
この窪みに興味が惹かれた河口さんは、
自身の作品にも窪みを取り入れたのだそうです。
窪みを通じて、過去と現在が繋がっている。
なんとも哲学的な作品です。
さて、琴ヶ浜海岸にはもう一点、
哲学的な作品が恒久設置されています。
それが、こちらの作品です。
あ、すいません。
ちょっと遠くて、よくわかりませんね。
もう少し近づいてみましょうか。
続・無料で観れる美術百選035 多和圭三《海へ》
作者は、多和圭三さん。
巨大な鉄の塊をひたすらハンマーで叩き続ける。
そんな唯一無二の制作スタイルで知られる彫刻家です。
「それのどこがアートなの??」と思った方もいらっしゃるでしょう。
鉄の塊を何万回と叩くと、わずかにゆるみが生じ、
鉄の縁にひさしのようにはみ出す部分が生まれます。
多和さんはそんな鉄の微妙な表情を生み出すために、鉄を叩き続けるのです。
とはいえ、こちらの作品の素材は鉄ではなく、小松石。
ハンマーで叩いたのではないでしょうが、
やはりその表面には微妙な表情が生まれていました。
なんか哲学的です。
ちなみに。
この作品のすぐそばには、注意書きの看板も設置されていました。
「撮影可」「お手を触れないでください」は、
一般的な美術のキャプションでもめにしますが。
「物を置かないでください」は初めて目にしました。
・・・・・まぁ、確かに、何も知らない人からすれば、
物を置くための台にしか見えないかもしれませんが。
せっかくの哲学的な作品の微妙なニュアンスが、
この注意書きのせいで、台無しになっていたような気がします。
いや、台は無くないのか。
<無料で観れる美術 データ>
琴ヶ浜海岸
住所:神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴1154-5
アクセス:○JR「真鶴駅」から路線バスにて『中川一政美術館行』
または『ケープ真鶴行』に乗車後、「里地」バス停下車すぐ