現在、角川武蔵野ミュージアムでは、
開館以来初となる本格的な現代アート展、
“タグコレ 現代アートはわからんね”が開催されています。
タグチアートコレクション。略して、タグコレ。
実業家の田口弘さんと、娘の美和さん、
その親子2代によって蒐集されている現代アートコレクションです。
現代アートの展覧会は、よくわからなくて、
とっつきづらい印象を抱いている方も少なくないでしょう。
しかし、今展は、“現代アートはわからんね”と、
サブタイトルにもあるように、よくわからなくても大丈夫!
そもそも、コレクターの田口さん自身も、
正直なところ、「よくわからないなぁ」と思いつつも、
面白いから、好きだから、といった理由でコレクションしているようです。
そんな田口さんが最初に出逢った現代アートは、
展覧会の冒頭に飾ってあったキース・へリング作品だったそう。
この作品の裏側に、作品と同サイズのキャプションが貼られてあり、
そこに田口さんご本人の言葉で、作品との出逢いについて語られていました。
そう。この展覧会の最大の特徴は、
キュレーターによるアーティストの解説だけでなく、
コレクター自身の言葉で、作品について紹介されていること。
それも、でっかいキャプションで。
「本当に世の中のキャプションの文字は小さすぎて読めない!」
そう渡辺謙ばりに不満を抱いていた方も、
この大きさならきっと安心して読めるはずです。
しかも、落札金額のエピソードなども紹介されています。
コレクターの言葉があまりにもリアルすぎて、
時に“そこまでぶっちゃけて大丈夫ですか?”とヒヤヒヤするものも。
例えば。
こちらのNYを拠点に活躍する抽象画家、
ピーター・ハリーのキャプションには、こんな一文がありました。
「ピーター・ハリーは、夫婦で・・・・・・、
いや、新しい彼女とだったか、会社まで来たことがありました。」
結構なプライベートを、さらっと発表しすぎです(笑)
それから、もう一つ印象に残っているのが、
デイヴィッド・サーレの作品のキャプションです。
どうやら、田口さんに作品を数点、
高く売りつけたギャラリーがあるようです。
まさか、こんな風に展覧会で悪事を暴露されてしまうなんて。
悪いギャラリストの皆様、どうぞお気をつけくださいませ。
それから、もうすでに気づかれた方もいらっしゃるでしょうが、
今回の展覧会のもう一つの大きな特徴は、展示空間が暗いということ。
現代アート展の会場=ホワイトキューブ。
その常識を覆す斬新な会場となっていました。
真っ暗な会場に浮かび上がるキース・へリングや、
奈良美智さん、会田誠さんら現代アーティストの作品の数々。
ありそうでなかった展示スタイルゆえ、
新鮮な驚き、新鮮な見え方がありました。
“現代アートはわからんね”というサブタイトルゆえ、
現代アート初心者向けに特化した展覧会かと思いきや。
現代アート好きにも十分に楽しめる展覧会でした。
やっぱり展覧会は実際に足を運んでみなくてはわからんね。
ちなみに。
展覧会のメイン会場は、1階グランドギャラリーですが、
期間中はミュージアム全体に、タグコレの作品が展示されているそうです。
外観にも、無料スペースにも、
そして、ロビーには、西野達さんのインパクト抜群の作品が展示されています。
さらに、角川武蔵野ミュージアムの人気スポット、
「本の箱庭」ともいうべきエディットタウンにも作品を設置。
(注:ただし、入場は別途「KCMスタンダードチケット」が必要です)
本棚の一部にさわひらきさんや、
田名網敬一さんの映像作品がさりげなく配架されています。
それらの中に近年注目を集めている潘逸舟さんが、
藝大の大学院時代に修了制作した映像作品もありました。
タイトルは、《リクライニング・スタチューズ》。
自由の女神やロダンの《考える人》など、
世界な有名な彫刻作品にコスプレした潘さんが、
最終的には、ゴロンと横になるというものです。
脱力系の映像ながら、不思議と見入ってしまいました。
どことなく、『笑う犬の冒険』のコントを彷彿とさせるものがありました。