尾道から船で約40分。
瀬戸内海の中部に位置する百島(ももしま)に行ってきました。
いわゆる瀬戸内国際芸術祭の会場にこそなっていませんが。
実は百島は、知る人ぞ知るアートな島。
周囲10㎞ほどの小さな島に、さまざまなアートな施設が点在しています。
まず訪れたのが、乙1731-GOEMON HOUSE。
2020年にオープンしたばかりの宿泊施設です。
こちらは、50年近く空き家になっていた建物を、地元の方と、
百島に携わるアーティストの皆さまが一丸になってリノベーションした施設だそうで。
コンセプトは、なんと「安らげない宿」とのこと。
その外観からはまったく想像がつきませんでしたが、
1階部分には、榎忠さんによる本物の薬莢を使ったアート作品が展開されていました。
宿泊スペースは、この真上。
確かに、安らげる気はしません(笑)
ちなみに。
こちらの宿の最大の売りは、
4人まで入れる特製の巨大五右衛門風呂。
スタッフさんが、ちゃんと付きっきりで沸かしてくれるそうです。
宿泊できるのは、毎週土曜のみで1組限定とのこと。
極上の安らげない体験をしてみたい方は是非どうぞ!
続いて訪れたのは、日章館という施設。
こちらはもともと、百島で唯一の映画館だったそうです。
しかし、1960年代にわずか6年しか開業していなかったのだとか。
そんな施設内で常設展示されているのが、
柳幸典さんの《ヒノマル・イルミネーション》という作品。
水盤の上にネオン看板が設置されており、
約5分の間に、旭日旗や黒い太陽などに姿を変えていくという作品です。
この作品を作動させるには、100円玉が必要となるので、
光っている様子を観たい方は、事前に必ず両替しておきましょう。
そして、最後に訪れたのが、この島のメインスペース。
アートベース百島です。
廃校となっていた百島中学校舎を、
柳幸典さんが中心となって改修したもので、
今年でめでたく開館10年を迎えました。
館内には、原口典之の《オイル・プール》や、
岩崎貴宏さんの《アウト・オブ・ディスオーダー(万物流転)》などが常設されています。
ちなみに。
岩崎さんの作品にあるクレーンは、
アートベース百島から見える造船所のクレーンを反転させたもの。
この場所ならではのアート作品です。
原口典之や岩崎貴宏さんの作品も見ごたえありますが、
やはり一番の目玉はこの施設の代表である柳幸典の作品群。
バンザイをするウルトラマンとウルトラセブンの人形で、
日本の国旗の形を作り出している《バンザイ・コーナー》や、
色のついた砂で表現したモチーフを、
プラスティック製の蟻の飼育器内に入れて、
その中を蟻が移動することで形が変化していく「アント・ファーム」シリーズといった、
柳さんの代表作の数々を、
それもアップデートされた最新版の数々を目にすることができます。
さらに見逃せないのが、体育館をダイナミックに活用したこちらの作品↓
柳さんのイエール大学大学院での修了制作、
《ワンダリング・ミッキー》を再制作したものです。
周囲を囲むドラム缶の数は、約600個。
ハムスターが回るヤツみたいなのの中にいるのは、
アメリカが生んだ人気者、ミッ○ーマウスが描かれたカート。
ガソリンを消費し続けるまで、資本主義は走り続ける。
そんなことを匂わす、実に意味深な作品です。
なお、余談ですが、作品では無いそうなのですが、
アートベース百島のトイレが、スゴいことになっていました。
どう考えてもアート。
スタッフさんに、「絶対誰かの作品ですよね?」と確認しましたが、
かたくなに「いえ、作品では無いです」と何度も否定されてしまいました。
個人的にはまだ納得していませんが。
また、こちらも作品では無いですが、
つい最近、アート百島に仲間入りしたヤギが可愛かったです。
ついでに(?)、カフェ内の黒板に描かれていた謎のゆるキャラも可愛かったです。
いわゆる瀬戸内芸術祭のアートは、
なんとなく全体的にはイベント感がありますが。
百島のアートは、いい意味でイベント感がないといいましょうか。
もっと島の暮らしや生活に根付いている印象を受けました。
決して、鑑賞者を突き放しているわけではないですが、迎合しているわけでもありません。
百島は、ほどよい距離感を覚えるアートな島でした。
ちなみに。
尾道と百島を結ぶフェリーの中には、
アートベース百島仕様のものがあります。
運が良ければ、このフェリーに乗れますよ。