日本では20年ぶりとなるマティスの大回顧展、
“マティス展”が、いよいよ東京都美術館で開幕しました!
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
こちらは、世界最大規模のマティス・コレクションを所蔵する、
フランスのポンピドゥー・センターの全面的な協力を得て実現したもので、
初期から晩年の作品まで、約150点が来日した史上最大規模のマティス展です。
展示風景
それらの中には、マティスの代名詞というべき、
ヴァンスのアトリエを描いた〈ヴァンス室内画〉シリーズのラストを締めくくる作品や、
アンリ・マティス《赤の大きな室内》 1948年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne-Centre de création industrielle
晩年に取り組んだ切り紙絵の代表的な作品群も。
アンリ・マティス《イカロス(版画シリーズ〈ジャズ〉より)》 1947年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne-Centre de création industrielle
さらに、今展の目玉とも言うべきが、
日本初公開となるマティス初期の傑作《豪奢、静寂、逸楽》。
マティスがフォーヴィスムに目覚める前、
シニャックの影響で新印象派風の表現に取り組んでいた頃の作品です。
アンリ・マティ 《豪奢、静寂、逸楽》 1904年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne-Centre de création industrielle
新印象派風でもあり、セザンヌ風でもあり、
マティスらしさは、ほとんど感じられません。
マティスのエピソード0とでも言うべき作品です。
なお、どうでもいいですが、右に描かれた木の枝の生え方が妙に気になります。
何でまたあの一か所から、一気に枝が伸びているのでしょう?
マティスのエピソード0といえば、こんな作品も。
アンリ・マティス《読書する女性》 1895年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne-Centre de création industrielle
若き日のマティスのパートナーで、
長女マルグリットの未婚の母に当たる女性を描いた作品です。
マティス展に飾られていなかったら、
ハマスホイの作品と思ってしまったことでしょう。
ただ、赤色系の壁や、壁紙やラグの紋様の雰囲気は、
のちのマティスの室内画にどこか通ずるものがあります。
まさに、マティスのエピソード0と言うべき作品です。
さて、今回のマティス展は、王道の作品ももちろん多くありましたが、
《豪奢、静寂、逸楽》や《読書する女性》のように、意外なマティス作品も、
積極的に取り上げられており、マティスの全貌が明らかになる内容となっていました。
いい意味で、マティスのイメージが変わる展覧会でした。
マティスぽくない作品の数々の中で、
特に印象に残っているのが、《コリウールのフランス窓》という作品。
アンリ・マティス《コリウールのフランス窓》 1914年 ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne-Centre de création industrielle
マティスも抽象画のような作品を、
それも冷たい抽象画風の描いていたのですね。
それから、マティスのブロンズ作品も多く展示されていました。
マティスがこれほどたくさんのブロンズ作品を残していただなんて。
展示風景
ちなみに。
今回出展されていたブロンズ作品の中で、
個人的に妙に気になってしまったのが、こちらの作品です。
《2人の黒人女性》(1907年) ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
タイトルは、《2人の黒人女性》とのこと。
・・・・・黒人なのか?
それはただ、ブロンズそのものの色が黒いだけのような??
そうそう、妙に気になった作品は、絵画でも多々ありました。
意外と、マティスの絵画にはツッコミ要素が豊富。
これも今回の展覧会を通じての大きな発見でした。
例えば、こちらの《窓辺のヴァイオリン奏者》。
《窓辺のヴァイオリン奏者》(1918年) ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
頭部が真っ白。
まるで『20世紀少年』に出てくる「ともだち」のようです。
と、それはそうとして。
腕の生え方、どうなってんだよ!
『アメトーーク』の絵心ない芸人か!
また例えば、こちらの作品。
《ピアノの前の若いヴァイオリン奏者》(1924-26年) ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
タイトルは、《ピアノの前の若いヴァイオリン奏者》です。
何でそんなとこで弾くねん!
ピアノを弾かんかい!
そして、今回の出展作品の中で、
もっともツッコミを入れたかったのが、こちらの《アトリエの画家》。
《アトリエの画家》(1916-17年) ポンピドゥー・センター/国立近代美術館
画面の奥には緑のガウンを着た女性。
そして、手前にはその姿を描く男性画家。
しかし、よく見ると、画家は裸です。
いや、お前が脱ぐんかい!!
さてさて、全8章仕立てのマティス展の最終章で紹介されていたのは、
マティス自身が「生涯の最高傑作」と語ったヴァンスのロザリオ礼拝堂。
ロザリオ礼拝堂 外観 © NHK
ロザリオ礼拝堂 堂内 © NHK
さすがに、実物は来日していませんが、
貴重なマケットやデッサンは来日しています。
展示風景
さらに、会場のラストでは、今展のための撮り下ろしの、
ロザリオ礼拝堂の4Kの高精細映像が上映されていました。
これを見たら、ロザリオ礼拝堂に行きたくなること間違いなし。
ロザリオ礼拝堂に行くまでが、今回のマティス展です。
┃会期:2023年4月27日(木)~ 8月20日(日)
┃日時指定予約制
┃会場:東京都美術館
┃https://matisse2023.exhibit.jp/