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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会

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今年めでたく開館20周年を迎える森美術館。

それを記念して、現在開催されているのが、

“ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会”という展覧会です。

 

 

 

テーマはずばり、「世界を学ぶ教室」。

展覧会を学校に見立て、授業の科目別に紹介しようというものです。

といっても、いわゆる図画工作や美術の科目はありません。

 

例えば、黒板にたくさんの文字が書かれたワン・チンソンの《フォロー・ミー》は「国語」、

 

ワン・チンソン(王慶松)《フォロー・ミー》 2003年 Cプリント 60×150cm 所蔵:森美術館(東京)

 

 

重量挙げの選手たちが公共彫刻を持ち上げようと奮闘する映像作品、

クリスチャン・ヤンコフスキーの《重量級の歴史》は「体育」といった具合に、

クリスチャン・ヤンコフスキー《重量級の歴史》 2013年 ビデオ、サウンド 25分46秒 Courtesy: Lisson Gallery

 

 

国語・算数・理科・社会といった基礎科目に、

哲学や音楽、体育、総合を加えた8つの科目で構成されています。

 

「哲学」の展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」 森美術館(東京)2023年

 

「理科」の展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」 森美術館(東京)2023年

 

数理モデルをモチーフにした杉本博司さんの作品などを紹介する「算数」と、

 

杉本博司 Courtesy:ギャラリー小柳(東京)

展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」森美術館(東京)2023年

 

ナフタリンを素材とした宮永愛子さんの新作などを紹介する「理科」に関しては、

 

宮永愛子《Root of Steps》 2023年

制作協力:信越化学工業株式会社 Courtesy:ミヅマアートギャラリー(東京)

展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」森美術館(東京)2023年

 

 

 

とても面白い切り口だと思いましたが、

「社会」や「哲学」、ましてや、一つの科目に留まらない「総合」に関しては、

基本的に、ほとんどの現代アートの作品が含まれるような気がしてしまいました。

超個人的な意見ですが、過去に森美術館で開催された展覧会、

“医学と芸術展”“宇宙と芸術展”のように、「算数」と「理科」をもっと掘り下げて欲しかったです。

 

と、それはさておき。

参加作家は、総勢50組以上。

出展作品は、約150点となっています。

そのうちの半数以上が、森美術館のコレクション。

実は意外にも、森美術館コレクションが、

このようにまとまって公開されるのは、初めてのことなのだとか。

それらの中には、アイ・ウェイウェイ(艾未未)の作品や、

 

「社会」の展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」 森美術館(東京)2023年
 

 

世界で最も活躍するベトナム人アーティスト、ディン・Q・レの作品、

 

ディン・Q・レ 展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」森美術館(東京)2023年

 

 

“もの派”を代表する李禹煥さんの作品もありました。

 

李禹煥(リ・ウファン) 展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」森美術館(東京)2023年

 

 

これらの作品は、森美術館で過去に開催された展覧会に出展されていましたっけ。

そういう意味でも、森美術館の20年を振り返られる、

まさに20周年を記念するに相応しい展覧会だったように思います。

星星

 

イー・イラン Courtesy: Silverlens Galleries, Manila/New York

展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」森美術館(東京)2023年

 

ヤン・ヘギュ 展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」森美術館(東京)2023年

 

さて、ここからは出展作品の中で、

特に印象的だったものをいくつか紹介していきましょう。

まずは、マレーシアのイー・イランによる《ダンシング・クイーン》から。

 

イー・イラン《ダンシング・クイーン》
 
 
こちらは、マレーシアのボルネオ島の織手たちと協働し、
制作された作品で、全面に英語のテキストが織り込まれています。
 
 
 
織り込まれているテキストは、実はすべて、
タイトルにもなっているABBAの『ダンシング・クイーン』を筆頭に、
レディー・ガガやホイットニー・ヒューストンといった女性歌手のヒット曲の歌詞なのだそうです。
つまり、ネイティブで曲に馴染みのある人が目にしたなら、
反射的に頭にメロディが流れるであろう、という作品なのだとか。
できれば、中島みゆきやDREAMS COME TRUE、
あいみょんといった日本版のものも制作して欲しいものです。
 
続いては、香港を拠点に活動するルーク・チンによる《ウサギ》
 

ルーク・チン(程展緯)《ウサギ》 2013年

 

 
ルーク・チンは、警備員やスーパーマーケットの店員など、
実際に労働者として働き、その経験をもとに作品を制作するアーティスト。
こちらの映像は、香港のとある工場で、
警備員として働いたその初日の映像なのだそう。
この日、香港を「ウサギ」と名付けられた巨大台風が直撃。
従業員たちはいち早く避難したそうですが、
初日ゆえ、慣れていなかった彼は、工場内を一人歩き回っていました。
映像にはその様子が映し出されているのですが、
肝心の巨大台風の驚異や危険性は、映像ではよくわかりません。
つまり、この作品は、大事なことはカメラに映らない、

映像だけでは伝わってこない、ということを暗示しているのだとか。

・・・・・・なるほど。

この作品が伝えたいメッセージは重要である気がしますが、

その大事なことが、この映像作品を観ただけでは伝わってきません。
ミイラ取りがミイラになる的な?
 
最後に紹介したいのは、日系アメリカ人のアーティスト、
田島美加さんによる「アール・ダムーブルモン」と名付けられた2点の絵画。
絶妙な美しいグラデーションが目を惹く作品です。
 

田島美加 展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」森美術館(東京)2023年

 
しかも、この作品、ただ美しいだけなく、
畜光性の顔料を使って描かれているため・・・・・
 

田島美加 展示風景:「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」森美術館(東京)2023年

 

 
照明が落ちると、作品そのものがボワッと光り輝きます。
仕組みとしては、一昔前のカラオケボックスみたいですが(←?)。
不思議と、人工的な感じはなく、むしろ自然を感じる作品でした。
個人的には、この展示空間が断トツ居心地よかったです。
ワールド・クラスルーム展における保健室のような存在です。
 
 

 ┃会期:2023年4月19日(水)~9月24日(日)
 ┃会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
 ┃https://www.mori.art.museum/

 

~読者の皆様へのプレゼント~ 
“ワールドクラスルーム展”の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。 
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。 
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、5月12日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。

 

 

 

 

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