なんとなーく、毎年どこかしらのミュージアムで、
その年の大河ドラマに関する展覧会が開催されています。
今年2023年、第62作目となる大河ドラマは『どうする家康』。
主役は、もちろん徳川家康です。
そして、そんな今年の『どうする家康』に関する展覧会、
“NHK大河ドラマ特別展「どうする家康」”が現在開催されているのは、三井記念美術館。
三井記念美術館は、1603年に家康が定めた五街道の起点として、
初代の木造の橋が掛けられた地、日本橋に最も近くに位置する美術館です。
そういう意味では、今展を開催するに最もふさわしい美術館といえましょう。
さて、さらにこの展覧会は、三井記念美術館を皮切りに、
やはり家康と関わりの深い岡崎市美術博物館と静岡市美術館を巡回するようで、
その3館トータルでの出展作品の総数は、実に約270点を超えるそうです。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
現在、三井記念美術館で出展される品の中には、
ドラマ内でも、松潤演じる家康が着用している《金陀美具足》の実物や、
重要文化財《金陀美具足》 桃山時代(16世紀)静岡・久能山東照宮博物館
戦国一の健康オタクとして知られる家康が、
実際に使用していたという青磁の鉢と乳鉢など、
徳川家康にまつわる品々が数多く含まれています。
それらの中には、こんなアイテムも。
重要文化財《洋時計》 1573年 久能山東照宮博物館蔵
(注:展示は4/15~5/14のみ)
こちらは、ゼンマイ式の内時計としては、国内現存最古のものです。
1609年にスペイン属領のフィリピン総督ドン・ロドリゴ一行が、
メキシコへの航海中に房総沖で遭難した際に、家康が救助したことがあったそうで。
それに対するスペイン国王からの謝礼の品なのだそうです。
ただ、貰ったはいいものの、この時日本は、
今の24時間制と違って、まだ不定時法だったわけで。
きっと、家康は困ったはず。
というか、そもそも使い方すらわからなかったはず。
スペイン国王も、その辺りを調べたうえで、謝礼の品を贈ってくれればいいのに。
ちなみに。
家康にまつわるアイテムの中で、
個人的に一番印象に残ったのが、《水艸立鷺図》。
徳川家康の作と伝わる絵画です。
近年、そのユルすぎるタッチの絵が、
日本美術ファンの間で話題の徳川家光ですが。
その祖父である家康の絵心も、なかなかどうして。
この祖父にして、あの孫あり。
血の繋がりを感じずにはいられない作品でした。
さてさて、展覧会では他にも、
明暦3年(1658年)の大火で架け替えられた際に、
新たに日本橋の柱の上に取り付けられたという擬宝珠や、
もともとは石田三成が所持していたものの、
関ヶ原の合戦で三成が破れたことによって、東軍側に渡り、
最終的には紀州徳川家に伝来した国宝の《短刀 無銘正宗(名物 日向正宗)》など、
国宝《短刀 無銘 正宗》(名物 日向正宗) 鎌倉時代(14世紀) 三井記念美術館蔵
(注:展示は4/15~5/14のみ)
家康とは直接関わりがないですが、
江戸幕府、徳川家に関する品も展示されています。
さらに!
織田信長や豊臣秀吉、明智光秀といった、
戦国時代のスーパースターたちの肖像画も展示されていました。
家康に特化した展覧会だと思い込んでいただけに、これは嬉しいサプライズ!
家康はあまり興味ないんだよなァ・・・と、
行くのをどうするか悩んでいる歴史ファンの皆様、
これは絶対に足を運んでおいたほうがいい展覧会ですよ。
最後に、今回の出展作品の中で、
とりわけインパクトが強かったものをご紹介。
《落合左平次背旗図》です。
こちらは、武田勝頼の家臣・落合左平次が、
背旗(背中に差していた旗)に描かれていた絵を写したもの。
貼り付けにされているマキタスポーツみたいな男は、
長篠城主・奥平信昌の家臣である鳥居強右衛門(すねえもん)。
彼は長篠の戦いの際に、武田勝頼の軍勢に包囲された長篠城から、
岡崎にいた家康に援軍を要請する使者として派遣されるも、その帰路で武田軍に捕らえられます。
その際、家康からの援軍が到着することを、
味方に叫んで伝えたため、勝頼の怒りを買い、磔にされました。
その勇猛な姿に、敵ながらアッパレと、
落合左平次は背旗のデザインに採用したのだそうです。
いや、そんなことしたら、絶対に勝頼の怒りを買うでしょうに。