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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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齋正機-只見線とそれぞれの鉄道物語-

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箱根にある成川美術館に行ってきました。

開館は1988年。

今年でめでたく35周年を迎える美術館です。

 

 

 

成川美術館といえば何と言っても有名なのが、展望ラウンジからの眺めでしょう。

「箱根のS席(スペシャルシート)をリザーブしました」というキャッチコピーは噓偽りなし。

 

 

 

一面に広がる芦ノ湖。

そして、奥には雄大な富士山。

さらに、その下に目をやると、絶妙な位置に赤い鳥居があって。

タイミングが合えば、海賊船もやってくる。

絶景にもほどがある眺めです。

もはや、この場所のために作られたのかのような完璧なる眺め。

この場所に個人や企業の建物でなく、成川美術館が建ってくれて良かった。

そう心から思いました。

 

 

と、成川美術館の見どころは、

もちろんこの眺めだけではありません。

実業家でコレクターの成川實さんが収集した、

戦後から現代にかけての日本画コレクション約4000点もまた絶景です。

そのコレクションの中には、平山郁夫や加山又造や、

 

 

 

現在の日展副理事長・土屋礼一さんといったビッグネームの作品もありますが。

 

 

 

成川さんが自身の眼で選んだ将来有望な画家、

世に未だ知られていない気骨のある画家の作品も多く含まれているそう。

まさに、現代日本画の殿堂といったところです。

 

さらに、日本画では無いのですが、館内のあちこちに、

さらっと中国の超絶技巧の美術工芸品も設置されていました。

例えば、こちらの象牙彫刻。

 

 

 

離れて観たとて、スゴそうであることが十分に伝わってきますが。

近づいて観てみたら、その想像の何倍もスゴかったです。

 

 

 

ど・・・ど・・・どうやったら、

こんな細密な表現ができるのでしょうか。

さらに、それ以上に驚かされたのが、こちらの玉製の薫炉です。

 

 

 

細密な彫刻が施されているのもさることながら、

何よりも目を見張ったのが、環や鎖の部分です。

これらは繋いだものではなく、なんと1つの玉から彫り抜かれています。

いや・・・もう・・・スゴすぎて、言葉を失いました。

あと、そんなスゴい貴重な美術工芸品が、

ホームセンターに売ってるようなつっかえ棒で支えられているのにも、言葉を失いました。

 

 

と、それはさておき。

現在、成川美術館ではそれぞれの展示室で、

オムニバス的にさまざまな展覧会が開催されています。

一つは、今注目の日本画家・岩田壮平さんの成川美術館では初となる個展。

 

 

 

そして、もう1つは、100歳で亡くなるまで、

現役で活躍し続けた堀文子さんの展覧会です。

 




 

成川美術館と堀さんの関係はとても深く、

国内でもおそらく最大となる100点以上の作品を有しているのだとか。

その中には、堀さんの代表作の一つ《ブルーポピー》も。

 

 

 

描かれているブルーポピーは、

ヒマラヤの標高5000mの地点にしか咲かないという幻の花。

この花をどうしても観たかった堀さんは、そのためだけに、

81歳の時に、周囲の反対を押し切って、ヒマラヤに行ったのだそうです。

この作品は大きな評判を呼び、たくさんのリクエストがあったようですが、

命がけで描いたものだからという理由で、決して2枚目以降を描かなったのだとか。

そんな堀さんが命を削って描いた絵に、

思いがけずサラッと出会ってしまって、逆に申し訳ない気持ちになりました。

もし、再び観られる機会があれば、

それまでに少なくとも富士山は登っておこうと思います(←?)。

 

 

さて、今回、成川美術館を訪れた僕の一番の目的は、

祝・只見線全線運転再開記念 齋正機-只見線とそれぞれの鉄道物語-”

 

 

 

自身のPodcast番組に先日出演してくださった日本画家・齋正機さんの展覧会です。

 

 

 

今回展示されていたのはすべて、鉄道のある風景。

 

 

 

穏やかな風景に、穏やかな色味、そして、穏やかなタッチ。

一見すると、ただの穏やかな絵(?)に思えるかもしれません。



 

しかし、絵に近づいて、よくよく見てみると・・・・・

 

 

 

1本1本細かい線がびっちりと描き込まれているのがわかります。

先ほど紹介した中国の美術工芸品くらい、

細やかな作業が全体に施されているのです。

さらに、絵の表面をよく見てみると、

どの絵にも不思議な染み(?)のようなものが浮かび上がっていました。

 

 

 

パッと見は、牧歌的な絵のようですが、

絵画でしかできない表現に挑む、意外と実験的な作風です。

実際、齋さんの敬愛する画家の一人は、マーク・ロスコとのこと。

 

 

 

それがなんとなく腑に落ちる、

色面を意識した作品もありました。

 

ほのぼのとしているのに、実は奥が深い。

ほのぼのとと見せかけて、

シュールや狂気も少し孕んでいる。

『ちいかわ』に通ずる世界観でした。

星星

 

 

 

 

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