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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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竹久夢二 描き文字のデザイン

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「夢二式美人」で知られる大正の画家・竹久夢二。

その絵ではなく、描き文字に着目したユニークな展覧会、

“竹久夢二 描き文字のデザイン”が、竹久夢二美術館で開催されています。

 

 

 

まず紹介されていたのは、

夢二が表紙絵を多く手がけたセノオ楽譜。

その原画の数々です。

 

 

 

これまでセノオ楽譜を観たことは何度もありましたが、

当たり前のように、描かれている絵に注目していました。

というか、文字には関心が向いていませんでした。

 

しかし、このように描き文字が抽出されてみて初めて・・・・・

 

 

 

そのバリエーションの多さに気が付かされました。

一つとして同じフォントがありません。

今ならばパソコンで作れますが、当然この頃は手描き。

単なる文字ではなく、描き文字も独立して一つの美術作品のようです。

 

 

 

さまざまな描き文字がありましたが、

個人的に印象に残っているのは、『さらば我世の幸福よ』の描き文字。

 

 

 

ホラー感が漂っていました。

楳図かずおや伊藤潤二の漫画を彷彿させるような。

 

それから、こちらの『扉』の描き文字も印象的でした。

 

 

 

「扉」という字の縦線の中に、

窓のような装飾がほどこされています。

思わず、宮沢りえの写真集『サンタフェ』の表紙の扉を連想してしまいました。

 

なお、紹介されていたセノオ楽譜の中には、こんなものも。

 

 

 

眼の中に「涙」の一字。

これはもう描き文字というより、

ほぼ絵と言っても過言ではありません。

 

ちなみに。

セノオ楽譜でもっとも登場する最頻出文字は、「歌」とのこと。

 

 

 

展覧会では、夢二が生み出した18種類の「歌」の字が紹介されていました。

見比べてみると、いろんな「歌」がありますね。

これらを毎回考えていたなんて。

 

と、夢二の大変さに想いを馳せていたら、

セノオ楽譜は夢二の全仕事のほんの一部とのこと。

自著の装丁も自分自身で行っていたようですし、

 

 

 

銀座千疋屋の図案や月刊誌のデザインも手掛けていたようですし、

 

 

 

『若草』という雑誌にいたっては、

死の直前まで表紙のデザインを担当していたようです。

(しかも、毎年、ロゴを変えるという力の入れようです)

 

 

 

さらに、展覧会では他にも、夢二が手掛けていた雑誌が紹介されていました。

これでも、ほんの一部とのこと。

 

 

 

それぞれの描き文字ももちろん味わい深かったのですが、

それ以上に気になってしまったのが、昭和初期に発行されていたというこの雑誌です。

 

 

 

その名の通り、果物に特化した雑誌なのだそう。

何てニッチな雑誌なのでしょう?!

そんな雑誌、絶対ネタが尽きるでしょ・・・と思ったら、案の定だったようで。

翌年には早くも、モデルチェンジしていました。

 

 

 

『果物』からの『趣味』。

いや、今度は幅が広すぎるわ!

結局、何の雑誌なん??

果物と趣味の中間くらいを目指せよ!

 

 

さてさて、展覧会では描き文字だけでなく、

夢二の書がしたためられた日本画の数々も紹介されています。

 

 

 

さらに、夢二の文字が書かれたものとして、

夢二のプライベートな日記や手紙も紹介されていました。

 

 

 

それらの中には、こんなものも。

 

 

 

こちらは、夢二の20コ下の恋人、お葉の遺品で、

文字が書けなかったお葉のために夢二自らが作った手習帳です。

展示では、「う」の欄が開いてありましたが、

「う」のつく言葉で最初に登場するのが「疑ひ」、最後が「浮気者」でした。

いやいや、もっと他に覚えるべき言葉があるような。

おそらく、この2人にとっては、「疑ひ」や「浮気者」がよく使う言葉なのでしょう。

スマホの予測変換のようで大変興味深かったです。

星

 

 

 

 

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