現在、サントリー美術館で開催されているのは、
“吹きガラス 妙なるかたち、技の妙”という展覧会。
紀元前1世紀頃に誕生したガラスの技法「吹きガラス」をテーマにした展覧会です。
吹きガラスとは、金属製などの吹き竿にドロドロの熱いガラスを巻きつけ、
風船のように口から息を吹き込むことで、素早くかたちを成形していく技法のこと。
陶磁器や金属では決して作れない、ガラスの特性を最大限に活かした技法です。
今展では、そんな吹きガラスで生まれた「形」と、
吹きガラスならではの「技」の数々にフォーカスが当てられています。
それゆえ。
キャプションには、作品名や制作地、
制作年、所蔵者や作品解説に加えて・・・・・
絵入りで制作方法も紹介されていました。
なるほど。こうすることで、この形が生まれていたのですね!
・・・・・ただし、たとえ、絵入りの説明があっても、
なんとなく制作方法が理解できたのは、初期のシンプルな吹きガラスまで。
職人技がこれでもかと込められた複雑で優美な吹きガラスにいたっては、
絵入りの説明を読んだところで、いや、読めば読むほど理解できなくなりました。
職人技というよりも、もはや魔法の域。
何をどうやったら、こんな形を機械や、
3Dプリンタも無しに作り上げることができるのでしょうか??
ちなみに。
こちらの《船形水差》は、吹きガラスにおける、
一つの頂点ともされる15~17世紀頃のヴェネチアの吹きガラス。
展覧会ではさらに、そのヴェネチアの技を、
現代的に昇華させた現代ガラス作家の作品も紹介されていました。
その中でとりわけ目を奪われたのが、
伊藤周作さんの《ファイバーレースヴェロネーゼ 白龍》。
ネーミングセンスは、若干の中二病はありますが、
作品そのもののセンスは、めちゃめちゃキレてます。
注目すべきは、表面全体にほどこされたレースのような装飾。
まるで本物のレースがガラスに閉じ込められているかのようですが、そうではありません。
ましてや、白いペンで手描きされたわけでもありません。
透明なガラスの中に、細くした乳白色のガラスを、
糸のように組み込むことで、レースのような繊細な装飾が作り上げられています。
なお、このレースガラスという技法は、16世紀においては、
秘法中の秘法としてベネチアのガラス職人に受け継がれていたそうですよ。
さて、今回の展覧会では他にも、
現代作家による吹きガラス作品が紹介されています。
これも吹きガラス、あれも吹きガラス。
現代の吹きガラスの数々を観ていたら、
いよいよ、吹きガラスの概念が吹き飛びました。
吹きガラスって何かね?
2000年近く前のものから比べたら、
最新の吹きガラスはとんでもない進化を遂げていました。
ちなみに。
展覧会のメインともいうべきは、サントリー美術館が誇る《藍色ちろり》。
朝ドラのタイトルみたいなネーミングの江戸時代のガラスの傑作です。
今展では、江戸博が所蔵する透明の《ちろり》と、
桑名市博物館が所蔵する《紫色ちろり》と併せて展示されています。
見た目の美しさ、涼やかさもさることながら、
実は、職人の技や創意工夫が随所に込められているそう。
しかも、その技法はよくわかっておらず、多くの謎に包まれているそうです。
今回、そんな《藍色ちろり》の謎に、
サントリー美術館と東京藝術大学大学のチームが挑戦したそうで。
その再現制作の様子が、会場で上映されていました。
上映時間は、なんと43分!
どのように作られていたのか、是非知りたいところでしたが、
とても43分も観ていられる余裕は無かったので、断念しました。
YouTubeにアップされていたので、こちらでチェックしようと思います。
さて、展覧会のラストを飾るのは、近代日本の吹きガラスの数々。
中でも特にフィーチャーされていたのが、
明治時代末頃から昭和時代初期にかけて作られた氷コップ。
いわゆる、かき氷入れです。
今空前のレトロブーム。
レトロ好きの方ならば押さえておきたい展覧会です。
ちなみに。
展覧会では、さまざまな氷コップが展示されていましたが、
その中でちょこちょこ登場していたのが、「赤乳白」の氷コップ。
アイスを入れるコップと思って鑑賞しているため、
「赤乳白」の文字が目に入るたびに、赤城乳業が頭をチラつきました。
ガリガリ君のメーカーの。