自分が世界史を習った時には、「世界四大文明」でしたが、
最近では、それに、メソアメリカ文明とアンデス文明を加えて、
「世界六大文明」と紹介される機会が増えているのだそうです。
そんな世界六大文明の一つ、古代メキシコのメソアメリカ文明に焦点を当てた特別展、
“古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン”が、東京国立博物館で開催されています。
トーハクでは、実に約70年ぶりとなる古代メキシコ展とのこと。
それゆえ、気合が入っているのでしょう。
メキシコ国立人類学博物館をはじめ、
メキシコの主要博物館から古代メキシコの至宝が約140件も集結していました。
中でも一番の目玉は何と言っても、アジア初公開となる「レイナ・ロハ」。
直訳すると、「赤の女王」です。
「赤の女王」は、1994年にマヤ文明の遺跡パレンケで、
石棺内から豪華な副葬品とともに発見された女性の遺体のこと。
発見された際に、その全身が真っ赤な辰砂で覆われていたのだとか。
そのため、文字通り「赤の女王」と呼ばれているのです。
今回の展覧会では、そんな「赤の女王」の副葬品が奇跡の来日を果たしています!
赤の女王のマスク・冠・首飾り
マヤ文明、7世紀後半 パレンケ、13号神殿出土 アルベルト・ルス・ルイリエ パレンケ遺跡博物館蔵
©Secretaría de Cultura-INAH-MEX. Foto: Michel Zabé
しかも、普通に展示ケースに並べられているのではなく、
「赤の女王」をイメージした等身大人形に着用させ、展示されていました。
そのおかげで(そのせいで?)、
考古品を鑑賞しているというよりは、
本当に、お亡くなりになった人の棺を眺めているような感覚に。
思わず手を合わせてしまいました。
ちなみに。
「赤の女王」が展示されている空間は、
なぜか、サイバー感溢れる宇宙船のような仕上がりに。
あるいは、ベンザブロックのCMのような印象も。
「あなたのかぜはどこから?」
赤の女王が「私は鼻から」とか言ってそうでした(←?)。
ちなみに。
マヤ文明の出土品の中で他に見逃せないのが、《96文字の石板》です。
96文字の石版 アルベルト・ルス・ルイリエ パレンケ遺跡博物館蔵
文字というより、ポップなイラストのように思えますが、これがマヤ文明の文字なのだとか。
マヤ文明は、日本の書と同様に、文字に美を感じていたそうで。
そういう意味で、こちらの《96文字の石板》は、
文字の美の傑作として名高い逸品なのだそうです。
そういった日本とマヤ文明の意外な共通点もある一方で、
マヤ文明の独自の文化が感じられる出土品も数多くありました。
例えば、こちらの《チャクモール像》なるもの。
チャクモール像 ユカタン地方人類学博物館 カントン宮殿蔵
見た目やポージングはゆるキャラのようですが、
お腹の部分が皿のようになっており、ここに生贄の心臓が置かれたのだとか。
マヤの人達にとって、生贄となって死ぬことは、
名誉なこととされていたため、生贄に立候補することもあったそうです。
マヤ、恐ろしい文明・・・!
(↑これが言いたかっただけ)
と、それはさておき、展覧会はマヤ文明以外の、
アステカ文明、テオティワカン文明の出土品も充実していました。
アステカ文明で特に見逃せないのは、《鷲の戦士像》でしょう。
鷲の戦士像 テンプロ・マヨール博物館蔵
大きさは、実に170㎝。
兵馬俑を思わせるものがありました。
そして、鷲にコスプレしたその様(?)は、
ガッチャマンを彷彿とさせるものがありました。
そして、テオティワカン文明で見逃せないのが、
テオティワカン文明の3大ピラミッドで発見された石彫。
その名も、《死のディスク石彫》です。
死のディスク石彫
テオティワカン文明、300~550年 テオティワカン、太陽のピラミッド、太陽の広場出土
メキシコ国立人類学博物館蔵
©Secretaría de Cultura-INAH-MEX. Archivo Digital de las Colecciones del Museo Nacional de Antropología. INAH-CANON
メキシコの先住民は、太陽は沈んだ(=死んだ)後に、
夜明けとともに東から生き返って昇ってくると信じていました。
つまり、こちらの《死のディスク石彫》は、
死んだ後の夜の太陽を表すと考えられているそうです。
これまで様々な古代文明展を観てきましたが、
それらではまったく目にしたことがないビジュアルばかり。
独自にもほどがある文化ゆえ、観るものすべてが新鮮でした。
この機会を逃したら、次はまた約70年後かも?
2023年の夏、必見の展覧会のひとつです。
ちなみに。
出展作品の中に、『水曜どうでしょう』のミスターみたいなのがいました。
立像 テオティワカン考古学ゾーン蔵
『ワンピース』の尾田栄一郎先生が描いたみのもんたみたいなのもいました。
猿の神とカカオの土器蓋 トニナ遺跡博物館蔵
あと、ウッチャンがMCの時に使う指し棒みたいなのや、
昔はどこの家庭のお風呂にもあった石鹸入れみたいなのも。
ウェウェテオトル神の甲羅形土器 テンプロ・マヨール博物館蔵
とにもかくにも見どころの多い展覧会です。
┃会期:2023年6月16日(金)~ 9月3日(日)
┃会場:東京国立博物館
┃https://mexico2023.exhibit.jp/