今まで誰も調べたことのないバカせまい歴史を徹底研究。
その成果を独自の考察で発表する企画。
それが、『美術のバカせまい史』です。
前回この企画では、『フェルメール来日史!』をお届けしましたが・・・・・
今回はこちらの雑誌に関する研究結果を発表したいと思います。
こちらは美術ファンにはお馴染みの雑誌『芸術新潮』。
一部の美術関係者の間で伝説の企画と言われた連載、
「ちくちく美術部」をはじめ、僕が長年お世話になっている美術雑誌です。
現在発売されている2023年6月号で、通算882号となります。
まさに、日本を代表する美術雑誌と言っても過言ではありません。
そんな『芸術新潮』の名物企画といえば、春画やヌード画を深掘りする特集号でしょう。
そこで今回僕は、こんなバカせまい歴史を調べてみました。
果たして、『芸術新潮』はいつからエロ特集を組んでいたのか?
そして、これまでにどんなエロ特集を組んでいたのか?
ということで、今回は、『芸術新潮』の編集部の皆様でさえ、
把握してないかもしれない“エロ特集号史”をひも解いていきたいと思います。
終戦から5年後の1950(昭和25)年。
この年、新潮社から『芸術新潮』が創刊されました。
その記念すべき創刊号の表紙は、こんな感じです。
表紙にデザインされているのは、
雑誌名と「新年創刊号」の文字、そして、女性のヌード画。
なんと『芸術新潮』は創刊号からすでに、エロを匂わせていたのですね。
そして、この年の7月号で早くも、
『芸術新潮』史上初となるエロ特集が組まれたようです。
それが、こちら↓
特集「裸體」。
「体」の漢字が旧字であることに、時代を感じずにはいられません。
第2弾となるエロ特集が組まれたのは、
それから3年後の1953年10月号のこと。
「裸婦」と、これまた漢字2文字のシンプルなタイトルの特集でした。
ところが、そこからしばらくエロ特集が組まれることはありません。
そう、俗にいう(?)『芸術新潮』エロ特集冬の時代に突入するのです。
ちなみに。
その期間に組まれた特集の一部を紹介すると、
「芸術は政治に動かされている」や「追いつめられた新人」といった社会派のものから、
「くたばれ芸術院賞」「前衛芸術に疲れました」、
「日本人にわからない絵」といった情緒不安定なものがありました。
さて、そんな『芸術新潮』がようやく、
裸体やヌードを特集するのは、1965年2月号のこと。
第2特集ではあるものの、「心象(イメージ)のヌード」という特集を組みまでした。
それからさらに月日が流れて、1970年。
この年、ついに『芸術新潮』が性に目覚めます。
1970年4月号の第1特集は、「エロチック画家」。
そして、その3か月後の7月号でも、「東のエロス」という特集が組まれました。
そこから堰を切ったかのように・・・・・
「ホルスト・ヤンセンのエロチシズム」(1971年4月号)
「もう一つの浮世絵の美」(1972年3月号)
「現代の「ヌード」」(1976年1月号)
「中世のエロス」(1976年6月号)
「石本正の裸婦」(1977年1月号)
「外国で公開された「日本の秘画」」(1977年4月号)
「瞽女画家の「性の哀歓」」(1977年10月号)
「お尻の美学」(1978年10月号)
と、73~75年の3年間を除き、
ほぼ毎年のようにエロ特集が組まれています。
ちなみに、「もう一つの浮世絵の美」や、
「外国で公開された「日本の秘画」」は春画のこと。
『芸術新潮』お得意(?)の春画特集は、1970年には始まっていたのですね。
しかし、1980年に突入すると、再びエロに陰りが。。。
なんと80年代は、「The Nude/川田喜久治」(1981年5月号)と、
「北斎 漫画から春画まで」(1989年3月号)の2つしかエロ特集がありませんでした。
このままエロが枯れてしまうのかと思いきや。
篠山紀信撮影の樋口可南子写真集『water fruit 不測の事態』が出版され、
ヘアヌードが解禁されたその翌年に当たる1992年に、こんな特集が組まれました。
「芸術的な、あまりに芸術的な「ヘア」」。
大事なことなので“芸術的な”と2回も言いましたよ。
なんとはともあれ、これを機にエロ特集は再び元気を取り戻します。
「ヌードの描き方」(1993年5月号)
「性表現50年史」(1994年2月号)
「浮世絵・消された春画」(1994年6月号)
「巨匠にもポルノグラフィ」(1995年6月号)
「北のエロス」(1997年8月号)
そして、「だっちゅ~の」が流行語に輝いた1998年。
『芸術新潮』のエロ特集史上、
もっとも攻めたであろうこんな特集が組まれました。
それが、こちら↓
「おしゃべりな乳房たち」という特集号です。
「古代から20世紀まで、時代に翻弄されて
ゆれにゆれるオッパイの運命を明かす怒涛のグラフィック乳房史!」
正直なところ、普通のエロ本を買うよりも、買うのに勇気がいる気がします(笑)
さて、そろそろまとめに入りたいと思います。
今回、僕がリサーチした限りで、
『芸術新潮』が組んだエロ特集の総数は、37回でした。
ちなみに、もっとも最新のエロ特集が組まれたのは、2020年の9月号です。
その特集タイトルは・・・・・
猥褻とは何か。
そう、世間に問いかけたきり、
『芸術新潮』は再びエロを封印してしまいました。
猥褻とは何か。
我々がそれを胸を張って答えられる日が来れば、
きっとまた『芸術新潮』はエロ特集を再開してくれることでしょう。
その日を信じて待ちたいと思います。
皆さま、ご清聴ありがとうございました。