2023年4月10日より、オーチャードホールを除いてBunkamuraは休館しています。
それに伴い、Bunkamuraザ・ミュージアムはしばらく、
渋谷ヒカリエのヒカリエホールを間借りする形で、展覧会を開催していくようです。
その第1弾として開催されているのが、“ソール・ライターの原点 ニューヨークの色”。
Bunkamuraザ・ミュージアムとしては、3年ぶり3度目となるソール・ライターの展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
“ソール・ライター?何それ?オイルライター的なやつ??”
そんな方のために、まずは簡単にご紹介を。
若き日のソール・ライター (1923~2013)は、
『ハーパーズ・バザー』や『エル』 といった、
一流ファッション雑誌のカメラマンとして第一線で活躍していました。
しかし、その約30年後に突如として、自身の写真スタジオを閉鎖。
そして、隠遁生活へ。
世間から姿を完全に消したソール・ライターは、
ただひたすら、ニューヨークの日常を写真に撮り続けていたそうです。
それから、さらに約30年の月日が流れた2006年。
ドイツのとある出版社から、ソール・ライターの写真集『Early Color』が刊行されます。
その写真集が大きな評判を呼び、世界的にソール・ライター熱が高まりました。
その時、なんとソール・ライターは83歳!
そう、美術史上でも類を見ないほどの遅咲きデビューを果たしたのです。
日本では、2017年と2020年にそれぞれ、
Bunkamuraザ・ミュージアムでソール・ライター展が開催されています。
ソール・ライター《無題》 撮影年不詳 ©Saul Leiter Foundation
ソール・ライター《無題》 撮影年不詳 ©Saul Leiter Foundation
琳派や浮世絵にも影響を受けたともいわれるその斬新な構図が、
多くの日本の美術ファンの心に刺さり、大きな反響を呼び起こしました。
これにより、ソール・ライターの日本での知名度が一気にアップしたのでした。
さて、過去2回のソール・ライター展は、
その人物像を知ってもらうことに、重きが置かれていましたが。
今展は、過去2回の展覧会を通じて、彼を知った人たちに向けて、
新たなソール・ライターの一面を紹介するものといった印象を受けました。
例えば、1950~60年代に撮影されたモノクロの未公開写真の数々が紹介されていたり。
ソール・ライター《無題》 撮影年不詳 ©Saul Leiter Foundation
また例えば、『ハーパーズ・バザー』でのお仕事が紹介されていたり。
ソール・ライター『ハーパーズ・バザー』 1963年2月号のための撮影カット ©Saul Leiter Foundation
さらには、実はもともと画家を目指していたというソール・ライター。
そんな彼が描き続けていた絵画も数多く紹介されていました。
ソール・ライター《無題》 1960年頃 ©Saul Leiter Foundation
それも、あえて絵画と写真を併せて展示するスタイルで。
「カラー写真のパイオニア」とも呼ばれるソール・ライター。
実は、彼がカラー写真を撮影していた当時、
『芸術写真=モノクロ』という風潮があったのだそう。
なぜ、ソール・ライターがカラー写真にこだわったのか。
その本当の理由は知る由もありませんが、
こうして、絵画とカラー写真を観比べてみると、
“ソール・ライターはカメラを使って絵画を描きたかったのではないか?”
そんな風に思いを巡らすことができました。
なお、モノクロ写真や『ハーパーズ・バザー』、絵画作品が多く紹介されている分、
ソール・ライターの代名詞ともいうべき、カラー写真のウェイトは減ってしまいっています。
しかし、ソール・ライターのカラー写真好きの皆様、ご安心を!
今展には、日本初公開となるカラースライドが数多く展示されています。
さらに、Bunkamuraザ・ミュージアムの展示室では実現できなかった、
10面の大型スクリーンを使った体験型展示「カラースライド・プロジェクション」も。
小さなカラースライドを覗き込んだり、
大型スクリーンに映し出される写真に没入したり、
ソール・ライターのカラー写真の世界に、どっぷりと浸ることができますよ。
ちなみに。
個人的に興味深かったのは、若き日のライターが撮影した、
アートの巨匠たちのポートレイトの数々を展示するコーナーです。
例えば、こちらの写真に映っているのは、若き日のユージン・スミス。
こののちに、水俣病の真実をカメラで追うことになる世界的な写真家です。
ソール・ライター《無題(ユージン・スミス)》 1950年代 ©Saul Leiter Foundation
では、こちらの写真に映っている人物は一体誰でしょう?
誰もが知るアート界の巨匠の若き日の姿です。
ソール・ライター《アンディ・ウォーホル》 1952年頃 ©Saul Leiter Foundation
正解は、アンディ・ウォーホル。
若き日はこんな純朴そうな青年だったのですね。
こののちに、金の亡者となり、
銀髪のカツラを被って、ウェイウェイするようになるのですね。
ダークサイドに堕ちる前の(?)ウォーホルの姿が観られて、思いがけない収穫でした。
┃会期:2023年7月8日(土)~8月23日(水)
┃会場:ヒカリエホール ホールA(渋谷ヒカリエ9F)
┃https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/23_saulleiter/
~読者の皆様へのプレゼント~
“ソール・ライター展”の無料鑑賞券を5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は7月28日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。