現在、銀座メゾンエルメス フォーラムでは、
“エマイユと身体”という展覧会が開催されています。
エマイユとは、陶芸に使われる釉薬(=うわぐすり)のこと。
そんなエマイユを効果的に取り入れた作品を制作する7人のグループ展です。
まず紹介されていたのは、フランス生まれのジャン・ジレル。
フランスの作家なのに、どこかフランスっぽくないのは、
中国宋王朝時代の陶芸に魅了されたのを機に陶芸に専念しているからでしょう。
西洋の技術とアジアの伝統が融合しているかのようです。
ちなみに、もっとも好きな陶芸作品は、曜変天目茶碗とのことで、
45年にわたって、曜変天目茶碗の再現研究を続けているそうです。
そちらのシリーズも出来れば観てみたいところでした。
こちらの巨大な作品を制作したシルヴィ・オーブレも、フランス生まれの作家。
彼女は、信楽に滞在した際に、
この作品を制作したのだそうです。
そう言われると、右の白いほうは、
どことなく信楽焼のタヌキに見えてきました。
そこから伸びた2つのボール状のものは、もはやアレにしか見えません。
また、壁一面に並べられた箒の作品も、シルヴィ・オーブレによるもの。
よく見ると、柄の部分が陶製になっています。
なかなか握りづらそうですし、
なかなか見た目もグロテスクです。
ここは京都では無いですが、
この箒がズラっと並べられた光景を見て、一瞬、帰りたくなりました。
フランス生まれの作家は、もう一人。
動物や少女をモチーフにするフランソワーズ・ペトロヴィッチです。
かわいいような、不気味なような。
絶妙のラインをついてくる作風です。
特に印象的だったのが、こちらの《腹話術師》。
人形の不気味さたるや・・・。
「今からお前らを殺しまーす」とか言ってきそう。
子どもが絶対に泣くヤツです。
続いて紹介したいのは、ユースケ・オフハウズさん。
フランスと日本にルーツを持ち、
現在はジュネーヴと東京を拠点に活動を行うアーティストです。
今回出展されていたのは、「たしか私の記憶では」というシリーズ作品。
空中に何やらいろんなものが浮いています。
それらはすべて、世界各国の有名な建造物。
「ヒューマン3Dスキャナー」を自称するユースケさんは、
世界各地を巡り、観光地の建物をじっくり見て、脳裏に焼き付けては、
アトリエに戻り、記憶だけを頼りに忠実にそれを出力(再現)して制作しています。
例えば、こちらは最近取り壊されたばかりの中銀カプセルタワー。
言われてみれば、そう見えまえますが。
うろ覚えで作った感じが、ちゃんと(?)伝わってきます。
ここまでジェンガみたいな建物では無いですよ。
なお、日本人の作家としては他にも、
重県伊賀市にて創作活動を行っている安永正臣さんと、
神奈川県湯河原町を拠点に活動するベテラン小川待子さんも参加しています。
銀座メゾンエルメス フォーラムの展覧会は、
これまでいくつも拝見してきましたが、意外にも陶芸作家は初めてだったような。
それゆえ、いつにも増して新鮮な印象を受けました。
エマイユもガラス質ゆえ、ガラスブロックの展示室との相性も抜群です。
最後に、7人目の出展作家、
内藤アガーテさんの作品をご紹介いたしましょう。
今展では、制作した陶器を用いた写真作品や、
その撮影で使用した陶製のハットやスリッパが展示されています。
さらに、展示空間のあちこちには小さなテーブルも設置されていました。
このテーブルは日本のちゃぶ台をイメージしているそうです。
・・・・・・・いや、正直なところ、ちゃぶ台ではないような。
と、それはさておき、ランチョンマットの上には、
食べ物の代わりに、セラミックでできた料理名が置かれていました。
僕が昭和の頑固おやじなら、
「こんな料理食えるか!」とちゃぶ台をひっくり返してるところです。
が、もし、ひっくり返していたら、
たぶん怖いことになっていたと思います。
ひっくり返さなくてよかった。