日本どころか、世界でも唯一となる、
キース・ヘリングのコレクションのみを展示する美術館。
それが、山梨県の小淵沢にある中村キース・へリング美術館です。
こちらで現在開催されているのが、
“キース・ヘリング:NYダウンタウン・ルネッサンス”という展覧会。
キース・ヘリングの1980年代におけるNYでの活動にスポットを当てた展覧会です。
キース・ヘリング=街中にグラフィティを描いていた人。
一般的にはそんな印象が強いかもしれませんが、
実は、立体作品も多く制作していたり、
1987年にドイツで開催された遊園地型の現代美術展に参加したり。
多岐に渡って活動したアーティストでした。
さらには、自身のアートを通じて、
HIV・エイズ予防啓発運動を行っていたり、
今で言うところのLGBTQ+といった人権問題を提起したり、
精力的に社会活動をしていたアーティストでもありました。
今展では、へリングのそんな意外な側面にも大きくスポットが当てられています。
今回の展覧会の中で特に見逃せないのが、
こちらの《マウント・サイナイ病院のための壁画》。
米国でも最大規模を誇るマウント・サイナイ病院の小児病棟に描かれた壁画です。
高さ1.3m、幅5mを超える超大作。
2つの頭、10本の足を持つ犬がモチーフとなっています。
実はこの作品は、昨年11月にサザビーズのオークションに出品されたもの。
1989年に病院が建て直された際に、
壁から剝がされて、以後ずっと倉庫に眠っていたものです。
それを中村キース・へリング美術館の館長である中村和男氏が落札。
今回、34年ぶりに公開される運びとなりました。
もちろん日本初公開でもあります。
キース・へリングファンなら、是非とも観ておきたい逸品です。
さらに、もう一つ見逃せないのが、《オルターピース:キリストの生涯》。
1990年に31歳でエイズによって、
亡くなる数週間前に完成したへリング最後の作品です。
こちらのオルターピース(=祭壇画)は、
現在、世界各地の教会や美術館9か所に収蔵されているとのこと。
中村キース・へリング美術館には、そのうちの貴重な1点です。
こちらもどうぞお見逃しなく。
さてさて、こうした聖なる作品を残している一方で、
へリングは俗なる(性なる?)作品も多く残しています。
例えば、防水シートに描かれたこちらの作品。
ポップな見た目ゆえに、
パッと見、気がつきづらいのですが、
堂々と男性のアレが描かれています。
ただ、不思議と卑猥な印象はありませんでした。
このデザインのTシャツなら、ギリギリ着られるかもしれません。
それから、俗といえば、こんな活動も。
親交の深かったウォーホルの勧めもあって、1986年にへリングは、
NYに自身がデザインしたグッズを販売する「ポップショップ」をオープンさせています。
なお、その2年後には、2号店をオープン。
その場所とは、なんと南青山です!
住所は、東京都港区南青山3-11-12。
現在のポルシェセンター青山の辺りにお店があったようです。
ちなみに。
現在、中村キース・へリング美術館では、
“ハウス・オブ・フィールド展”が同時開催されています。
こちらは、『プラダを着た悪魔』や『セックス・アンド・ザ・シティ』といった、
ヒット作の衣装デザイナー、スタイリストとして知られるパトリシア・フィールド。
その彼女が半世紀をかけて蒐集したアートコレクションを紹介するものです。
こちらの展示空間は、俗も俗!
これでもかというくらいに、俗なパワーに満ち満ちていました。
今、自分は小淵沢にいるのか?
はたまた、新宿二丁目にいるのか?
会場に足を踏み入れた瞬間、一瞬マジでわからなくなりました。