現在、建築倉庫ミュージアムを前身とするWHAT MUSEUMでは、
“感覚する構造-力の流れをデザインする建築構造の世界-”という展覧会が開催されています。
本展でフォーカスされているのはズバリ、建築の構造。
実際に建築を造る上でもっとも重要な要素の一つといえるものです。
建築を設計するのは建築家・・・・・と思っているかもしれませんが。
実は、構造家もその設計に大きく関わっています。
例えば、建築家が「こんな建築を造りた~い」と考えたとします。
(↑実際には、そんなバカみたいな感じではないでしょうが)
それを実際に建てる場合、地震に耐えれるのか、
風には耐えれるのか、そもそも自重で崩れないのか、など、
安全な建築を実現させるための構造計算をするのが、構造家です。
最初の展示室では、そんな構造家の一人、
佐々木睦朗さんの仕事の数々が紹介されていました。
佐々木さんは、世界的に活躍する建築家たちが、
こぞって絶対的な信頼を置く構造家のトップランナー。
佐々木さんがいなかったら、
磯崎さんが岐阜に建てたこちらの建物も、
西沢立衛さんが設計した豊島美術館も、
(模型だけ見ると、エヴァの使徒の顔みたいですが)
実現していなかったかもしれません。
そんな佐々木さんの代表作の一つが、
伊東豊雄さん設計のせんだいメディアテークです。
何も知らずに見ると、この模型は作りかけのように思えます。
なぜなら、柱や梁が無いから。
しかし、これが完成形。
細い鉄骨が組み合わさった縦に貫くチューブ状のもの13本と、
特殊な形をした鉄骨が埋め込まれた床だけで、この建物は成立しているのです。
実際のせんだいメディアテークの周囲は、
もちろん雨風を避けるために、ガラス面で覆われていますが。
とはいえ、こんな細い、薄いものだけで、
大きな建物が壊れてしまわないか心配になってしまいます。
が、しかし、構造家・佐々木さんによって、
この軽やかな印象の建築が実現できました。
しかも、せんだいメディアテークが竣工したのは、2001年。
そう、あの大震災でも崩れることはなかったのです。
さて、佐々木さんに続いて紹介されていたのは、
構造家の佐藤淳さんが今進めている取り組みでした。
それは、人間が月に滞在するための構造物。
その縮尺1/10模型が本展で初公開されています。
こちが、その構造物。
ポテトチップスの袋のような感じです。
実は、近年の観測により、月には無数の縦孔、
それも、直径数十mという巨大な穴が見つかっているのだそう。
その地下空間を利用すれば、外の影響は大きく受けないはず。
なので、心もとない印象のこの構造物(←個人の感想です)でも問題はないのだとか。
構造家の仕事は宇宙にも繋がるのですね。
最後に紹介されていたのは、陶器浩一さん。
その名前から思わず陶芸家を連想してしまいますが、構造家です。
陶器さんは、竹構造建築のパイオニアにして第一人者。
竹でこのような集積材を作り・・・・・
それを組み合わせることで、このような構造物を作っています。
近づいてみても、木に見えますが、すべて竹です。
竹の引張強度は木の10倍なのだとか。
しかも、日本各地には放置されている竹林がたくさんあります。
竹で建造物が造れたら、良いことだらけですね。
なお、会場では、大阪万博のパビリオンの計画案も展示されていました。
・・・・・・・いろんな意味で建つのでしょうか?
なお、展覧会のラストでは、吊構造やラーメン構造、トラスといった、
基本的な構造の種類が、名建築の模型の数々を例にして紹介されていました。
それらの模型の中には、1970年の大阪万博のお祭り広場の模型も。
あの頃の大阪万博は良かった!
それに比べて、2025年の大阪万博は・・・・・。
建築の構造と、大阪万博について、
いろいろと考えるきっかけとなる展覧会でした。