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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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さいたま国際芸術祭2023

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文化芸術による都市としての魅力向上を目指し、

さいたま市を舞台に3年に一度開催される芸術祭。

それが、さいたま国際芸術祭。

その3回目に当たる“さいたま国際芸術祭2023”が開幕しました。

 

 

 

今回ディレクションを務めるのは、

千葉市美術館での個展も記憶に新しい現代アートチーム目[mé]。

「わたしたち/We」をテーマに、会期中常に変化し続け、

一日として同じ日が無い芸術祭になっているとのことです。

 

メイン会場となるのは、旧市民会館おおみや。

 

 

 

この建物内に、谷口真人さんや荒川弘憲といった、

目[mé]が選んだアーティストたちの作品が設置されています。

 

 

 

今回参加しているアーティストの中には、

個人的に10年来の知り合いでもあるアーティストユニットL PACK.も。

彼らは「コーヒーのある風景」をつくるアーティストユニット。

 

 

 

今回の新作では、普通のコーヒーではなく、

「コーヒーを使った炭酸飲料のある風景」を作っていました。

 

 

 

こちらのドリンクは、この新作のためだけに作られたオリジナル。

味は全部で3種類あるそう。

800円とは、なかなかなお値段なのですが、

一からオリジナルで制作したとなれば、このお値段も納得。

せっかくなので、買ってみました。

 

image

 

 

飲んでみた率直な感想は、

コーヒーの風味も感じられつつ、

フルーツのフレーバーも感じられつつ。

口に入れた瞬間は甘味があり、その後にコーヒーのビターさがやってくる。

そんなお味でした。

 

さて、この作品で大事なのは飲み終わってからです。

実はL PACK.この新作は、古典落語の『茶の湯』に着想を得たものでして。

説明は省きますが、『茶の湯』のラストに、まんじゅうを投げるくだりがあります。

それにちなんで、この作品では、

飲み終わった缶を階段下にあるゴミ箱に投げ捨てるのです。

ただし、階段下には降りられないので、一発勝負。

なお、自販機上に乗っているモニターは、

その様子をリアルタイムで中継しています。

もし、入らなかったら、その様子が他の人に観られてしまうわけです。

そんなプレッシャーと戦いながら、缶を投げてみました。

 

 

 

結果は、まぁ、案の定といいますか・・・・・。

しかも、少し残っていた中身が、

自分の腕にかかってしまいました・・・。

ただ、それも全部ひっくるめて、体験ですね。

800円の元は十分に取れました(笑)。

 

 

 

と、それはさておきまして。

さすが、目[mé]が手掛けるだけあって、この芸術祭は、

会場にただアート作品が展示されているだけではありません。

目[mé]によって、旧市民会館おおみやの会場全体には、

透明板とフレームで構成された「導線」が張り巡らせられています。

 

 

 

複雑に仕込まれた「導線」によって、

来場者は必然的に複雑な動きを強いられます。

あっち側に行きたいのに行けない。

ロールプレイングゲームの初期の頃のような、もどかしさを覚えます。

 

さらに、この「導線」は「窓」の役割も果たしているとのこと。

 

 

 

何気ない光景や物も、「導線(=窓)」越しに観ると、

不思議とインスタレーション作品や意味のあるものに感じられます。

それこそが、目[mé]の狙いです。

 

また、この「導線」は大ホールの客席の一部、

 

 

 

さらには、舞台の真裏にまで伸びています。

 

 

 

なんと、大ホールでリハーサルが行われている時も、

それどころか、イベントが行われている時も、「導線」は移動可能とのこと。

これまでにない鑑賞体験ができることは請け合いです。

星星

 

 

そして、もう一つ目[mé]が仕掛けたのが、「スケーパー」。

「スケーパー」とは目[mé]による造語で、

景色の一部に見えるが、実は人為的なものを指すそうです。

目[mé]曰く、メイン会場はもちろんのこと、

周辺地域にいろいろ「スケーパー」を仕込んでいるとのだとか。

とは言え、決してネタバレは行わないそうです。

自分で探すより仕方ありません。

 

建物の上に不自然に片方だけ乗っていた赤いコンバース。

これはほぼ間違いなく、「スケーパー」でしょう。

 

 

 

ハンガーで出来た巣っぽい何やらに、

意味深に干されていた数枚のタオル。

 

 

 

これらも、きっと「スケーパー」。

「スケーパー」があちこちに仕込まれていると思うと、

もはや埼玉で観るものすべてが、何もかもが怪しくなってきました。

“子ども放置禁止”という、通に考えたらあり得ない条例も、「スケーパー」だったのかも?

 

なお、スケーパーはモノだけにあらず。

人の場合もあります。

目[mé]曰く、十数人~数十人レベルで、

会場の内外に、スケーパーが仕込まれているそうです。

スケーパーは自らは名乗らないそうですが、

「スケーパーですか?」と声を掛けると、答えてはくれるそうです。

 

 

ちなみに。

今回、芸術祭を巡っている最中に、

確実にそれっぽい人を見つけました。

 

image

 

 

その人は、メイン会場の入り口となる階段に座り、パソコン仕事をしていました。

そして、数十分後にここに戻ってきたところ、

まったく同じ場所で、まだパソコン仕事をしていました。

これは絶対にスケーパーに違いない!

そう思って声を掛けたところ、「あ、違いますよ」と返されました。

ギャフン。

 

 

 

 

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