現在、東京オペラシティアートギャラリーでは、
“石川真生 ─私に何ができるか─”が開催されています。
沖縄生まれ沖縄育ち、自らを“沖縄人”と称する写真家・石川真生さん。
「沖縄を表現するために写真家になる」と決意し、以来半世紀近く、
一貫して沖縄を撮り続けている彼女の東京では初となる大規模展覧会です。
展覧会の前半では、「赤花 アカバナ 沖縄の女」や、
「Life in Philly」といった石川さんの代表的なシリーズが紹介されています。
それらの中には、「港町エレジー」というシリーズも。
離婚後、一人娘を育てていくために、
「あーまん」という名の居酒屋を経営したという石川さん(今は閉店)。
そのお店に出入りする漁師や港湾労働者たちを被写体にしたシリーズです。
写真であるはずなのに、一瞬を切り取ったものではなく、
不思議と、彼らの生きざまが映像のように見えてきました。
まるで『ザ・ノンフィクション』を1本観たかのような充足感。
観終わった後に、脳内で『サンサーラ』が流れていました。
また、沖縄を語る上で避けて通れないのが、基地問題。
石川さんは、沖縄の人々だけでなく、
沖縄を取り巻く現状も撮影し続けています。
「沖縄と自衛隊」シリーズの作品は、モノクロであるため、
1960年代、あるいは70年代あたりに撮影されたものかと思いきや。
1990年代に撮影されたシリーズなのだそう。
勝手に、日本での戦争は遠い過去のものと思い込んでいましたが、
これらの写真を観ると、決して遠い過去の話では無かったことに気づかされます。
いや、過去どころか、沖縄では今なお続いているわけで。
すべてのツケを沖縄に押し付けて、
本土に暮らす僕らはのうのうとしていたのだと、痛感しました。
サブタイトルの“私に何ができるか”は、
石川真生さん自身の言葉ではありますが、
鑑賞した僕らも“私に何ができるか”と自問せずにはいられないことでしょう。
なお、展覧会の後半で紹介されているのは、「大琉球写真絵巻」シリーズ
2014年より開始され、今なお制作が続く、
彼女のライフワークというべきシリーズです。
こちらは、沖縄の“庶民の歴史”を絵巻のように繋げた作品で、
2014年のパート1から毎年制作され、最新作はパート10となっています。
本展ではそのうちのパート1、パート8、パート9、パート10を公開。
そこには、ガイドブックには決して載らない、
真の沖縄の光景の数々が映し出されていました。
全体的には、石川さんの怒りのようなものがヒシヒシと伝わってきましたが。
それだけでなく、中にはほっこりする写真も。
その緩急といいますか、バランスが良いアクセントとなり、
長大な作品シリーズにもかかわらず、最後まで目が離せませんでした。
ちなみに。
写真そのものももちろん見ごたえがあったのですが。
それ以上に石川さんの熱を感じたのが、
展覧会の冒頭で配布されているハンドアウトです。
会場にはほぼキャプションが無いのですが、
代わりに、ハンドアウトの中に作品の解説がみっちり書いてあります。
それも、石川さん自身の言葉で。
その文字数は、なんと14000字とのこと。
文章から、石川さんの熱がこれでもかと伝わってきました。
文章というより、もはやシャウト。
竹原ピストル的な。