芸術はバクマツだ!
そんな思わず「なんだ、これは!」と、
二度見してしまうコピーが付けられた日本美術展が、
この秋、サントリー美術館にて開催されています。
その名も、“激動の時代 幕末明治の絵師たち”。
幕末から明治にかけて活躍した絵師をフィーチャーした展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
出展作は、展示替えも含めて約170件。
それらの中には、「画鬼」と称された河鍋暁斎や、
河鍋暁斎《鍾馗ニ鬼図》 双幅 明治4~22年(1871~89) 板橋区立美術館
(注:現在は展示されておりません)
最後の浮世絵師と呼ばれる月岡芳年、
月岡芳年《魁題百撰相 菅谷九右ヱ門》 大判錦絵 慶応4年(1868) 町田市立国際版画美術館
(注:現在は展示されておりません)
晩年に10年もの歳月をその制作に費やしたという、
増上寺蔵の超大作《五百羅漢図》で知られる狩野一信といった、
狩野一信《五百羅漢図 第二十一・二十二・四十五・四十六・四十九・五十幅》
嘉永7~文久3年(1854~63)大本山増上寺 【通期展示】
ここ近年、人気急上昇中の幕末の絵師たちが名を連ねています。
が、しかし、本展の隠れた主役とも言うべきは、
北斎の門人で、のちに洋風画家として大成した安田雷洲。
一般的には知名度がない人物ながらも、
本展では、《危嶂懸泉図》を含む実に28点が出展されています。
安田雷洲《危嶂懸泉図》 一幅 江戸時代 19世紀 公益財団法人 平野政吉美術財団
(注:展示期間は11/8~12/3)
全4章立ての展覧会のうちの1章が、
ほぼまるまる安田雷洲特集と化していました。
安田雷洲のゴリ押しが目に余る展覧会です(笑)。
ただ、僕個人の率直な感想としては、
むしろ、もっと安田雷洲の作品を観たかったくらい。
本展を通じて初めてまとまった数の彼の作品を目にしましたが、
こんなにも個性的でインパクトのある幕末の絵師がいたのか、と雷が落ちました。
左)安田雷洲《赤穂義士報讐図》 江戸時代 19世紀 公益財団法人 本間美術館
右)安田雷洲《山水図》 江戸時代 19世紀
(注:現在は展示されておりません)
左)安田雷洲《ナポレオン像》 江戸時代 19世紀 神戸市立博物館
右安田雷洲《鷹図》 安政3年(1856) 公益財団法人 摘水軒記念文化振興財団
(注:現在は展示されておりません)
この才能は、ゴリ押ししたくなるのも納得。
これをきっかけに、安田雷洲ブームが来るかも?!
日本美術ファンならば、押さえておきたい展覧会の一つです。
なお、安田雷洲の才能は、絵画だけに留まらず。
実は、銅版画としても、作品を多く残しているそうで。
展示風景
江戸時代の銅版画家というと、
司馬江漢と亜欧堂田善が2強なのかと思っていましたが、
いやいや、安田雷洲という強力な伏兵が存在していたようです。
ちなみに。
良くも悪くも、安田雷洲の印象が強い展覧会でしたが、
もちろん、それ以外の画家の作品でも印象に残ったものは多々ありました。
例えば、春木南溟なる画家による《虫合戦図》。
春木南溟《虫合戦図》 嘉永4(1851)年頃 神戸市立博物館
(注:現在は展示されておりません)
タイトル通り、虫が合戦をしている絵です。
よく見たら、建物はすべて虫カゴで出来ていました。
さらに、よく見たら、大砲は芋虫と朝顔で出来ていました。
小ネタの多い一枚。
虫好きならば、いつまでも観ていられる作品です。
(自分は虫が苦手なので、早々に切り上げましたw)
また例えば、服部雪斎なる博物画家による《葡萄と林檎図》(写真左)も印象的でした。
左より、服部雪斎《葡萄と林檎図》 明治14年(1881)、諸家《群鶴図》 弘化元年(1844)
(注:現在は展示されておりません)
服部雪斎なる博物画家は、
葡萄をよくモチーフにしたというだけあって、葡萄の表現は絶品。
「巧い!」を通り越して「美味しそう!」。
Welch'sのパッケージに描かれた葡萄ばりに、訴求力がありました。
最後に、どうしても気になってしまった作品をご紹介。
谷文晁による《柿本人麻呂像》(写真右)です。
左)渡辺崋山《坪内老大人像画稿》 文政元年(1818) 東京国立博物館
右)谷文晁《柿本人麻呂像》 文化3年(1806) サントリー美術館
(注:現在は展示されておりません)
どう見ても、柿本人麻呂の着物の柄が西武百貨店の包装紙。
┃会期:2023年10月11日(水)~12月3日(日)
┃休館日:火曜
┃会場:サントリー美術館
┃https://www.suntory.co.jp/sma/