今年2023年にめでたく開館35周年を迎えた名古屋市美術館(←おめでとうございます!)。
それを記念して、現在開催されているのが、
“福田美蘭―美術って、なに?”という展覧会。
現代美術家を独自の路線でひた走る、
福田美蘭さんの中部地方で初となる大規模展覧会です。
ちなみに。
昨年に発売された『芸術新潮』12月号の・・・・
「推し展 in 2023」という鼎談企画の中で、
注目する展覧会して、僕が推したうちの一つ。
公式に発言した以上、何としても行かねばならず!
ということで、会期終了ギリギリで、なんとか滑り込んできました。
僕が敬愛するアーティストの一人、福田美蘭さん。
なので、まぁ、間違いなく面白いだろうと、
そもそも期待はしていましたが・・・・・期待以上でした!
展覧会の序章では、福田さん自身をモチーフにした作品が紹介されています。
まずは、《志村ふくみ《聖堂》を着る》。
かつて福田さんは、とある美術館にて、
染織家の人間国宝の志村ふくみさんの《聖堂》という作品を目にしたことがあるそうで。
普通に考えたら、着るべきはずの着物が、美術館においては、
人が袖を通さない形で展示されていることに違和感を覚えたそう。
だったら、絵の世界の中だけでも、自分が着てしまおう。
そんな感じで描かれたのが、この作品です。
また例えば、2003年の《ぶれちゃった写真(マウリッツハイス美術館)》という作品。
スマホが当たり前の現代では、
手ブレした写真を撮ることはほとんどありません。
あったとしても、すぐに削除するだけです。
とは言え、一昔前のフィルムの時代は、
現像してみるまで、手ブレしているかどうかはわかりませんでした。
現像してみて初めて、ショックを受けることしばし。
福田さんも、オランダのマウリッツハイス美術館で撮影した写真が、
帰国後に現像してみたら、ブレブレでガッカリしたことがあったそうです。
しかし、ただでは転ばない福田さん。
そのブレブレの写真をモチーフに、
そっくりそのまま絵画で再現した作品を制作したのです。
それが、《ぶれちゃった写真(マウリッツハイス美術館)》。
・・・・・と、これはほんの序章。
展覧会では、福田さん流のユーモアで、
古今東西の名画をモチーフにした代表作の数々や、
時事ネタ(?)を取り入れた作品の数々も紹介されています。
もちろん、名古屋市美術館での記念展ゆえ、
名古屋市美のコレクションをモチーフにした最新作もありました。
新作に関しては、作品の横に添えられた、
福田さんご自身の説明を読めば、”なるほど!”となりましたが。
長年のファンの自分的には、そこまで捻らず(?)とも、
もっと単純に、美術の基礎知識が無くても楽しめる作品でも良かったような。
サブタイトルにも“美術って、なに?”と銘打っているだけに。
ちなみに。
個人的に一番印象に残っているのは、大原美術館が所蔵する、
伝フィンセント・ファン・ゴッホ《アルピーユの道》をモチーフに制作した作品です。
こちらが、その伝フィンセント・ファン・ゴッホ《アルピーユの道》。
伝とあるように、ほぼ間違いなく、ゴッホの真作ではありません。
この絵を実際に見た福田さんは、
あまりのゴッホらしくなさに衝撃を受けたそう。
そこで、この絵を自分なりにゴッホらしくさせました。
それが、こちらの作品。
タイトルはズバリ、《ゴッホをもっとゴッホらしくするには》。
お世辞抜きで、ゴッホらしくなっています。
なんという能力!
福田さんの手にかかれば、ラッセンももっとラッセンらしくできるかも。