現在、ちひろ美術館・東京で開催されているのは、
“ちひろ美術館セレクション 2010→2021 日本の絵本展”という展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
ちひろ美術館ではこれまで10年ごとに、
時代を象徴する絵本を紹介する展覧会を開催してきました。
現在開催中のものは、その第4弾。
2010年から2021年までに刊行された絵本の中から厳選された30冊が紹介されています。
なお、開催が2023年の今年になってしまったのは、言わずもがなコロナのせいです。
さてさて、紹介されていた30冊の中には、
人気絵本作家ヨシタケシンスケさんのデビュー作『りんごかもしれない』や、
老若男女問わず支持を集めるミロコマチコさんの『ぼくのふとんはうみでできている』、
国内はもちろんヨーロッパでも評価の高い三浦太郎さんの『ちいさなおうさま』といった、
ここ近年話題となった絵本が数多く含まれています。
それらのラインナップを目にして、アートテラー的に何より気になったのが、
今回選ばれた絵本作家の大半が、ここ近年、美術館で個展を開催しているという事実。
例えば、ヨシタケシンスケさんは、世田谷文学館にて、
“ヨシタケシンスケ展かもしれない”が開催されていました(現在も巡回中)。
ミロコマチコさんも、横須賀美術館を含む巡回展が、
三浦太郎さんは昨年板橋区立美術館で大規模個展が開催されています。
また、現在、千葉市美術館で個展が、
絶賛開催中の荒井良二さんの絵本も紹介されていましたし、
2020年に立川にオープンした「絵とことば」をテーマにしたPLAY! MUSEUMで、
これまでに個展が開催されたjunaidaさんやtupera tuperaの絵本も紹介されていました。
つまり、何を言いたいかといいますと、
今回選ばれた絵本およびその作者のラインナップを見て、
2010年以降、特にここ近年は、ちひろ美術館以外においても、
絵本作家を紹介する展覧会が増えたことを実感させられました。
間違いなく、その礎を築いたのは、世界初の絵本美術館であるちひろ美術館。
もし、ちひろ美術館が誕生していなかったら、
今日のように、絵本の展覧会が当たり前に開催されていなかったかも。
そう考えると、絵本展の聖地ともいえる場所に、
今を時めく絵本作家のレジェンドやトップスターたちの原画が、
一堂に集まっている光景が、実に尊く思えてきました。
2020→2031は、絵本は美術界において、
どのような10年間になっていくのだろうか。
引き続き、注目していきたいと思います。
ちなみに。
今回紹介されていた30冊の中で、
個人的にツボだったのが、『たまごのはなし』。
千葉県出身の注目の絵本作家、しおたにまみこさんによる初の絵童話です。
ある日、突然目を覚ました“たまご”が、キッチンを飛び出し、家の中を冒険するというストーリー。
子どもがワクワクしそうな内容なのですが、
いかんせん主人公の“たまご”の顔が絶妙に可愛くなく(笑)。
しかも、言動もそこまで可愛くなく。
ただ、その可愛くない感じが、一周回って愛らしいのです。
なお、“たまご”に同行する“マシュマロ”も、絶妙な可愛くなさ。
そのシュールな世界観に、沼ってしまいそうです。