現在、水戸芸術館現代美術ギャラリーでは、
“今村源 遅れるものの行方”という展覧会が開催されています。
80年代前半より京都を拠点に制作活動をスタートさせ、
独自の哲学的作風で一目を置かれてきた現代美術家・今村源さん(1957~)。
その10年ぶり、関東以北では初となる美術館での大規模個展です。
関西を中心に活動をされているとのことで、
不勉強ながら、本展を通じて初めて知った作家さんなのですが。
現在活躍する30代40代のアーティストの中には、
今村さんの影響を受けたことを公言する方も少なくないそうで。
知る人ぞ知るカリスマ的アーティストなのだそうです。
さて、そんな今村さんの作品の特徴は、
針金や発泡スチロール、ボール紙などなど、
およそ一般的な彫刻には使われない軽い素材を使用することにあります。
それだけでなく、ありふれた日用品を素材にしたりもします。
ただ、そういった軽い素材や、
ありふれた日用品を素材にしながらも。
気づかなければ気づかない。
でも、気づいちゃったら驚きを隠せない。
そんな独特な作品を制作しています。
例えば、こちらの《ポリペールⅡ》という作品。
一見すると、ただのポリペール(=ゴミ箱)です。
でも、よく見ると、蓋の取っ手や、
本体の4つの取っ手が内側に付いています。
つまり、ポリペールがギュンと裏返しになっているのです。
もちろん、実際に裏返せるわけではないので、
裏返ったように見えるように、丹念に作られているはず。
でも、具体的にはどうやったのか、想像すらつきません。。。
また例えば、こちらの《イエ(イス)》という作品。
担当学芸員さん曰く、初めて観た時に衝撃が走った作品とのことです。
一見すると、やはり何の変哲もない木の椅子ですよね。
しかし、観る角度を変えると、
変な形になっていることに気が付きます。
それだけでも驚きですが、担当学芸員さん曰く、
実はこの椅子と、他の作品に使われているこの椅子は兄弟なのだとか。
・・・・・・・ちょっと何言ってるか分かりません。
詳しく教えてもらうと、こういうことでした。
まず、この使い古された椅子を、
一つ一つのパーツに分解します。
それらを斜度が付くように、それぞれ削り、
再び組み合わせたのが、先ほどの《イエ(イス)》なのだとか。
ん?でも、表面を削ってしまったら、古色では無くなってしまいますよね?
そう、なので、最終的には古色に見えるよう、表面を塗って仕上げているのだとか。
いや、何のために?!!
とてつもないことをやっているのに、
そのスゴさがまったくもって伝わらない。
いや、そもそも伝える気がないのでしょう。
それが、今村源ワールドです。
その最たる作品が、こちらの《受動性 2005-12》という作品。
空間全体を埋め尽くしているのは、
今村さんが「アワ」と呼んでいる五角形の構造物。
よく見れば、ワイヤーの一つもありません。
つまり、こう見えて、自立しているのです。
軽やかに見えますが、設置するのは実に大変だそうで。
完成するまでに、1週間近くもかかったそうです。
で、驚くべきは、ここから。
この「アワ」は作品ではありません。
「アワ」はいうなれば台座。
その一部にそっと置かれている(ひっかかっている?)これが作品なのだそうです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ちなみに。
水戸芸術館のエントランスの吹き抜けにも、
巨大なインスタレーションが設置されています。
こちらもワイヤーは一切なし。
針金だけで自立しています。
やはり設置に一週間近くかかったとのこと。
労力と見た目のスゴさが比例してないんよ。
と、ここまで紹介したのは、出展作品のほんの一部。
他の今村作品も、ワールド全開です。
シュールで独自性があって、
かつ哲学的で一種の天才性すら感じる。
若手のアーティストから熱狂的な支持を得るのも納得です。
芸人で言えば、板尾創路タイプでしょうか。
まだ咀嚼しきれていないですが、なんだかスゴいものを見ました。