いろいろあって、いろいろ心配だったアーツ前橋。
(詳しく知りたい方は、「アーツ前橋 作品紛失」で検索!)
2013年10月にオープンして、
今年でめでたく10周年を迎えました。
それを記念して現在開催されているのが、
“ニューホライズン 歴史から未来へ”という展覧会です。
テーマは「ニューホライズン(=新しい地平)」。
アーツ前橋の再出発?新しい門出?を祝うべく、
国内外でカルト的な人気を誇る五木田智央さんや、
ネオン管をモチーフにした絵画で近年注目を集めている横山奈美さんをはじめ、
美術界の未来を担う若手から、
人気と実力をともに兼ね備えたベテランまで、
国内外のアーティスト30名(組)が参加しています。
それらの中には、つい先日、世界でもっとも権威ある美術の賞の一つ、
高松宮殿下記念世界文化賞の彫刻部門を受賞した、オラファー・エリアソンも。
こちらは、彼の2006年の作品《4つのサンクッカーライト》↓
サンクッカーとは、太陽光だけで調理ができるアイテム。
主にキャンプやアウトドアなどで用いられるものです。
そんなサンクッカーを4つ組み合わせ、
そこにオレンジ色を放つライトが取り付けられています。
ただそれだけのシンプルな作品なのですが、
オレンジ色の光が強烈すぎて、空間全体がオレンジ一色に。
しかも、不思議なことに、この空間にいる人はもれなく、同じような色に見えるのです。
どんな色の服を着ていても、グレーっぽい色合いに。
さらに、肌の色まで同じくグレーっぽい色合いになっていました。
エリアソン曰く、この空間では人種が区別なく混ざり合うとのこと。
シンプルながら哲学的でもありました。
彼が高松宮殿下記念世界文化賞を受賞するの納得です。
人種をテーマにした作品と言えば、イエメン出身、
現在はロンドンを拠点に活動中のザドック・ベン=デイヴィッドの作品も。
床一面に敷き詰められた白い砂の上には、
金属シートをカットして作られた年齢も国籍もバラバラな人々。
その数、実に6000人!
その数の多さにも単純に圧倒されましたが、
何より印象的だったのは、どの人とも目が合わないこと。
6000人それぞれが、鑑賞者を気にせず、思い思いの行動をしています。
普通に考えたら、日常とはそういうもの。
そんな当たり前のことを再確認できる作品でした。
他にも印象に残った作品がいくつもありました。
まずは、37歳という遅咲きでデビューした武田鉄平さんによる絵画。
一見すると、厚塗りで描かれたポートレートのように思えます。
しかし、作品に近づいて見ると、あらビックリ!
実際は、厚塗りなのではなく、
厚塗りを細密に描写した作品なのです。
なので、画面はフラット。
騙し絵のような作品です。
それからもう一つ印象的だったのが、
建築コレクティブ403architecture [dajiba]による、
《椅子の場所は決めることができる》というプロジェクト。
美術館の1階エントランスと地下のホワイエに、
それぞれ、さまざまなタイプの椅子が展示されています。
しかも、これらの椅子は、修理中のもの以外は実際に座る事ができます。
さて、実はこれらは、前橋市のあちらこちらから借り受けてきたもの。
例えば、こちらの椅子は・・・・・
前橋のとあるブルワリーで、
客席として使われているものなのだとか。
全部で30脚ある椅子の中には、こんな椅子も。
こちらは、前橋市役所の市長室から借り受けてきたもので、
前橋市長の山本龍さんが、当選時から実際に座っているものなのだそう。
ということは、展覧会の期間中、前橋市長は椅子が無いのですね。
もしや、空気椅子とか?
さてさて、今回の10周年記念展は、
アーツ前橋を飛び出して、周辺の各地も会場となっています。
それに関しては、また明日!
後半へ続く。