―昨日の記事からの続き―
アーツ前橋の開館10周年記念展として、
“ニューホライズン 歴史から未来へ”が開催されています。
しかし、その会場はアーツ前橋だけにあらず。
周辺の施設にも、作品が設置されています。
例えば、話題のアートホテル・白井屋ホテル。
その吹き抜けのエントランスには・・・・・
蜷川実花さんによるインスタレーション作品が設置されていました。
蜷川さんらしい極彩色の花々に目がいきますが、
よく見ると、枯れた花も半分くらい混じっています。
こちらの《残照》という作品は、
蜷川さん曰く、前橋市の栄光と停滞を表しているとのこと。
前橋市に縁もゆかりもないですが、
これ以上、枯れないことを切に願うのみです。
また例えば、2023年5月にオープンしたばかり、
平田晃久さんによる話題の建築「まえばしガレリア」。
その3階にあるレジデンススペースの1室では、
ビジュアルデザインスタジオ・WOWによる作品が展示されています。
額装されているのは、3台のモニター。
その表面は、グリット状の曲面アクリルで覆われています。
それゆえ、映像が歪んで見えるという作品です。
こうした前橋の新しいスポットが会場となる一方で、
前橋に昔からある建物も、展覧会の会場となっています。
その一つが、老舗百貨店・スズラン前橋店。
その新館3階では・・・・・
演劇団体「マームとジプシー」によるインスタレーション作品が展開されています。
スズランの停滞・・・いや、衰退っぷりが目につきすぎて、
正直なところ、作品の内容がそこまで入ってきませんでした。
衰退といえば、こちらの会場も。
建物全体がゴールドに輝くこの「HOWZE」というビルは、
バブル期に建てられたもので、キャバレーなどが入居していたそうです。
現在は、廃ビルとなっていますが、
そのうちの3フロアに作品が設置されています。
その中でもっともインパクトがあったのが、
蜷川実花さんによるインスタレーション作品《Breathing of Lives》。
こちらがその入り口です。
右側に見えるのは、もちろん蜷川さんの作品。
左にあるネオン看板は、もとのキャバレーのものだそうです。
店名が「スーパースター」って!
ダサいにもほどがあるだろ。
ただ、店名こそダサかったですが、蜷川さんの作品は良かったです。
これまでに何度も彼女の作品は目にしていますが、
間違いなく、今回の会場が断トツでしっくりきていたような。
蜷川さんの作品世界は、
原美術館や東京都庭園美術館よりも、
キャバレーがもっとも相性が良いようです。
この空間を体験できただけでも、前橋に足を運んだ甲斐がありました。
それから、HOWZEでもう一つ強く印象に残っているのが、
まえばしガレリアにも作品があったWOWによるインスタレーション作品です。
空間の一角に、明滅を繰り返す無数の白熱電球が並んでいます。
そして、その対面には、無数の鏡が並んでいます。
一見すると、ランダムに設置されているようですが。
ある一か所に立って、鏡を見てみると・・・・・
電球が水平に一直線に並んでいました。
そのことに気が付いた瞬間、となる作品です。
アーツ前橋では、1つの現代アート展として楽しみ、
周辺会場を巡りながら、芸術祭のような雰囲気を楽しみ。
1粒で二度美味しい展覧会でした。
新生アーツ前橋に大いに期待したいと思います。
ちなみに。
商店街のアーケードにも作品が設置されています。
アンドリュー・ビンクリーによる《ストーン・クラウド》という作品。
巨大な岩が浮いている。
その光景は十分インパクトがありますが、
それ以上にインパクトがあったのが、そのすぐ近くにあるお店の名前。
おばさんのファッション 福美吉野。
マダムでもレディースでもなく、おばさん。
どういう人が、どういうマインドで買いに来るのか。
頭上に浮かぶ岩よりも、そっちのほうが気になって仕方ありませんでした。