立教大学池袋キャンパスのほど近くに、
実は、 日本を代表するあの推理小説家の家があります。
その人物とは・・・・・
そう、平井太郎です。
・・・・・・と、本名で言われても、ピンとこないはず。
ペンネームは、江戸川乱歩。
明智小五郎や怪人二十面相の生みの親としても知られる人物です。
そんな乱歩が昭和9年から亡くなるまで、
実際に住んでいたというのが、こちらのお家。
戦争で池袋が戦火に包まれた際も、
立教大学とこの家は、焼失を免れたのだとか。
それゆえ、乱歩が住んだ当時のままの姿で残っています。
現在は立教大学が管理し、月曜と金曜に、
さらに月2回程度は週末にも、一般公開もしているのですが、
改修整備工事のため、来年1月よりしばらく長期休館となるとのこと。
(※最終開館日は、12月20日の予定だそうです)
縁あって、その前に特別に、普段公開していない場所も含めて案内頂きました。
本日は、その取材の過程で知ったあれこれを紹介したいと思います。
●応接室の椅子は青で統一されていた
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
通常は立ち入ることのできない応接室に、特別に入らせて頂きました。
こちらの応接室は、昭和32年末に乱歩が増築したのだそう。
設計や内装なども乱歩自身が手掛けたこだわりの応接室です。
全体的には、乱歩が好きだったというイギリス風の仕上がりですが。
その雰囲気とは、そこまでマッチしていなかったのが、椅子の色。
全部、青。
路線バスの椅子か、昔の電車の椅子を彷彿とさせるものがありました。
乱歩にとって、「椅子=青」というマイルールがあったのかも。
ということは、『人間椅子』も青かったのかも。
●暖炉と見せかけて、ストーブだった
立派な暖炉があるなぁ・・・・・と思ったら、
ジャストサイズのストーブが設置されていました。
これは元から、こういう設計だったとのこと。
しかも、ストーブはストーブでも、
小学校で見るタイプのストーブでした。
●乱歩は引越し魔だった
応接間にある書斎机の上に乗っていたのは、
乱歩自らが自身の記録をスクラップした「貼雑年譜」のレプリカ。
几帳面を通り越して、記録魔というくらいに、
自分自身の半生を事細かに記録していました。
その中に、引っ越しに関する記録も。
なんでも、旧江戸川乱歩邸に住むまで、46回も引越していたそうです。
葛飾北斎の93回という記録には及びませんが、
それにしたって、生涯で46回の引越しとは大記録。
記録魔であり、引越し魔でもあったようです。
●室瀬春二による座卓があった
応接室の上には、乱歩が設計した和室もあります。
しかし、応接室の天井を3mと高く取ってしまったため、階段の勾配が急に!
(↑『大改造‼劇的ビフォーアフター』でよく見かける問題です)
足腰が弱くなっていた乱歩は、ほぼ足を踏み入れたことがなかったそうです。
そんな和室にポツンと意味深に置かれていたのが、こちらの座卓。
一見すると、何の変哲もない座卓ですが、
よく見ると、全体に漆が塗られているのがわかります。
しかも、ご丁寧に、普段は見えない裏面や脚の底にまで。
この座卓を作ったのは、漆芸作家の室瀬春二とのこと。
漆芸家の人間国宝、室瀬和美さんの実のお父さんです。
なんでも、室瀬春二はこの近くに住んでいたようで、
ご近所さんというよしみもある、乱歩がオーダーしたと考えられているそう。
さらっと置いてありましたが、きっと貴重なもの。
僕が怪人二十面相だったら、この座卓を狙います(←?)。
●土蔵の中には貴重な本がたくさんあった
乱歩が池袋のこの家に引越してきた最大の理由。
それは、立派な土蔵があったこと。
一般公開では中に入ることはできませんが、
今回は特別に、その内部を取材させて頂きました。
1階部分の本棚は、蔵書でびっしりと埋め尽くされています。
それらの本の中には、海外の推理小説や犯罪関係の研究書も。
さらに、2階に上がると、そこには大量の和書がありました。
保存の観点から、本自体は別の場所で保管されているそうで。
現在、土蔵に残っているのは、その和書を入れるための手製の箱。
タイトルや作家名は、乱歩本人が書いたものだそうです。
よーく見ると、バランスよく文字を配置するため、ちゃんと罫線が引かれています。
どんだけ几帳面な性格なんだ。
さらに、几帳面と言えば、こんなものも。
こちらは、乱歩がこれまでに出した本や合著、
もしくは、乱歩自身や乱歩の著作への批評が含まれている本の一覧。
自身でタイトルを描き、専用の箱を作り、
一目でわかるように保管していたようです。
さすが記録魔。
●田中が借りパクしていた
土蔵の本棚をくまなく見ていたら、こんなものを見つけてしまいました。
どうやら、乱歩は本を人に貸す際には、
誰にいつ貸したかわかるように、こうした木の札を作って、
本が置かれていた場所に差し込んでいたようです。
これがあるということは、まだ本が返ってきていないということ。
心当たりのある田中さん、早く返しましょう!