3年に一度。
ホキ美術館にとって、
もっとも重要と言っても過言ではない、
あの機会がやってきました。
それが、通算5回目となる“「私の代表作」展”です。
「私の代表作」とは、ホキ美術館の所蔵作家約60名の中から、
厳選された“いま一番輝いている作家”の方々に、その名もズバリ、
将来「私の代表作」と成るような100号以上の大作を描いてもらうというもの。
制作期間は、3年。
そうして制作された作品は、
ホキ美術館で唯一黒い壁を持つギャラリー8にて、
向こう3年間展示され続けます。
つまり、下手な作品を描こうものなら、3年間も晒され続けるわけです。
それゆえ、毎回、選ばれた作家の皆様は、
並々ならぬ気合を入れて、「私の代表作」に挑みます。
いうなれば、写実画家たちのガチンコバトル!
写実画家の皆様にとって、
絶対に負けられない戦いが、そこにはあるのです。
今回、「私の代表作」を制作したのは、13人。
その中には、エジンバラ在住の風景画家・原雅幸さんや、
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
床を描かせたら右に出る者はいない(?)小尾修さん、
たびたびSNSで作品がバズっている三重野慶さんをはじめ、
ホキ美術館ではお馴染みの面々が顔を揃えています。
もちろん、写実画家のカリスマ五味文彦さんや、
写実画家の生きるレジェンド、野田弘志さんも参戦!
まだまだ、中堅作家や若手作家には負けない。
カリスマやレジェンドの矜持を見た気がします。
ちなみに、野田さんが発表していたのは、
存在そのものを描く人物画シリーズ「崇高なるもの」の最新作。
これまで、ノーベル化学賞受賞者の野依良治さんや、
日本を代表する詩人・谷川俊太郎さんが、そのモデルを務めてきましたが。
今回モデルとなっているのは、今年の頭に、
93歳でお亡くなりになった精神科医で作家の加賀乙彦さんです。
まるで本当にそこにいるかのような、存在感がありました。
今回の「私の代表作」の中で、
個人的にググッと惹かれたのは、
塩谷亮さんの《Simone con la mitologia》です。
モデルは、塩谷さんが15年前に、
まだ12歳の少年だった時に出逢ったという、イタリア人のシモーネ君。
これまで塩谷さんは継続的に、
シモーネ君をモデルに絵を描いています。
そのたびに、彼の成長を感じていたのですが、
今やシモーネ君はこんなに立派な青年になっていたのですね。
なんだか、親戚のおじさんのような気持ちになりました。
・・・・・と、それはさておき。
シモーネ君の顔や髪の毛、腕、服の表現、
さらに、背後の大理石のレリーフ像に、床に落ちたザクロなど、
見どころの実に多い作品なのですが。
思わず二度見してしまったのが、壁に打たれた釘の頭。
絵画だと頭ではわかっているのに、
塩谷さんには珍しく、「本当に釘を打ったのかな?」と、思ってしまいました。
こんな風な錯覚をしたのは、フェルメール以来。
隅から隅まで、見逃せない作品でした。
それから、13人の作家の中で、
もっともインパクトがあったのは、
言わずもがな、石黒賢一郎さんです。
石黒さんだけ、違うステージにいる印象を受けました(笑)。
なお、この謎の装置は、細胞融合増殖抑制装置とのこと。
ウイルスの増殖を抑えることができるのだとか。
この装置の設定はもちろんのこと、
装置そのものも、石黒さんの手で作られています。
どんどん写実絵画の世界から旅立っているような。
ちなみに。
“第五回「私の代表作」展”に合わせて、
ギャラリー8以外では、これまで過去4回分の、
「私の代表作」の数々が展示されていました。
それらの中には、石黒さんが前回に作成した等身大のサイボーグ(?)も。
顔のモデルは、石黒さん本人です。
なお、その先にあるのは、トイレ。
トイレに行く人を見守る門番的な役割を担っているのでしょうか?
ちょっと圧が強すぎて、出るものも出なくなりそうです(←?)。