■エッシャー 視覚の魔術師
監督・制作・脚本・撮影:ロビン・ルッツ
脚本:マラインケ・デ・ヨンケ
ナレーション:スティーブン・フライ
2018年製作/80分/オランダ
トリックアートで世界的に知られるオランダ人版画家・画家、
マウリッツ・コルネリス・エッシャーの生涯、作品に迫ったドキュメンタリー。
エッシャーの家族へのインタビュー、
彼が遺した1000を超える書簡や日記、
収集家の証言などから知られざるエッシャーの波乱に満ちた人生、
そして創作の足跡を丁寧にたどる。
また、70年代のサイケデリック・ムーブメントの時代に、
エッシャーからの影響を多大に受けたロックミュージシャンの、
グラハム・ナッシュへのインタビューや、
人々の日常生活の中に見られるエッシャーの影響など、
その創造力の源泉をCGアニメーションの手法も取り入れながらさまざまな角度から探っていく。
(映画.comより)
「エッシャーの生涯や作品に関して、
エッシャー自身のナレーションで紹介するドキュメンタリー。
(注:実際に演じているのは、イギリスの俳優でコメディアンの方だそう)
子持ちの女性を略奪婚していたことや、
戦時中は家族の食料を確保するため自転車で遠征していたことなど、
エッシャーの意外なエピソードの数々を知ることが出来ました。
作風が作風だけに、人間味が無いといいましょうか、
サイコパスのような人物像を勝手に思い描いていたのですが。
家族を大切にしたり、制作で悩んだり、
エッシャーもまた、普通に人間だったのですね。
とりわけ印象的だったのが、エッシャーにも怒りの感情があったこと。
エッシャーの版画が世界的にブレイクするきっかけとなったのは、1960年代のこと。
アメリカのヒッピーたちに、トリップできる作品だともてはやされたのでした。
とはいえ、エッシャーの版画を勝手に複製し、
その上、勝手にサイケデリックな色を彩色していたそう。
エッシャーはそれに対して、非常にご立腹だったそうです。
当時はまだ著作権の概念がゆるゆる。
もし、現代だったら、エッシャーは裁判を起こしていたことでしょう。
そうそう、怒りと言えば、その矛先はミック・ジャガーにも。
なんと、ミック・ジャガー本人から、エッシャーに、
LPレコードのジャケットに、新作か未公開作を使いたいと連絡があったのだそう。
しかし、エッシャーは、仕事の忙しさを理由にお断り。
その文末には、こう添えたそうです。
「私をマウリッツと呼ぶのは無礼だ」
ミック・ジャガーよりも、ロックな男。
それが、マウリッツ・コルネリス・エッシャーです。
ちなみに、どうでもいいのですが。
映画内では、インタビューで実の息子も登場します。
ジョージ・エッシャー(当時92歳)。
その見た目が、横浜美術館時代から、
お世話になっている天野太郎学芸員に似ていました。
そのせいで、インタビューの内容が半分以上入ってこなかったです。
(星3.5つ)」
~映画に登場する名画~