展覧会の内容は関係なしに、図録の素晴らしさだけを、
アートテラー・とに~が独断と偏見で評価する“年に1度の図録の祭典”。
それが・・・・・
図録・オブ・ザ・イヤー
アートファンやアート業界の一部の方が注目している年末恒例企画です。
なんだかんだで、今年で8年目。
そんな2023年は、ルーヴル美術館展やマティス展、モネ展といった、
今年の目玉展覧会の図録が軒並みランクインを逃す波乱の年となっています。
果たして、グランプリに輝くのはどの図録なのか?
いよいよ結果発表です!
第10位 やまと絵-受け継がれる王朝の美-
今年の日本美術の大本命展覧会の図録。
《鳥獣人物戯画》や《源氏物語絵巻》、
《伝源頼朝像》に『平家納経』を筆頭に、
教科書でお馴染みの美術品が数多く掲載されています。
日本美術ゆえ、長期間公開できず、
展示替えも多い展覧会だったので、コンプリートは至難の業。
せめて図録ですべてを観たい。
そう思って購入する日本美術ファンも多かったのでは?
第9位 北宋書画精華
中国書画史における頂点の一つで、
“東洋のルネサンス”とも称されている北宋時代。
そんな北宋時代に焦点を当てた日本初の展覧会の図録です。
国宝や重要文化財が多数出品!
2019年に約80年ぶりに再発見後初展示され、
大いに話題になった李公麟の《五馬図鑑》の公開も大きな話題となりました。
が、それ以上に美術ファンの度肝を抜いたのは、
徽宗皇帝作で国宝の《桃鳩図》と、伝徽宗の《猫図》、
ともに個人蔵が、それぞれ3日ずつ限定で公開されたこと。
公開日が違うので、会場でこそ共演していませんが、
図録では、《桃鳩図》と《猫図》が2点が並びあって掲載されています。
この2点が書籍上で共演するは、史上初の快挙なのだそうです。
第8位 ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開
アーティゾン美術館の展示フロア3階分をすべて使い、
美術館総出(?)で行われた史上最大規模のな抽象絵画展。
それが、“ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開”。
出展数は驚異の約350点!
それゆえ、図録も大ボリューム!
今年のボリュームKINGは、間違いなくこの図録です。
第7位 特別展 恐竜図鑑
化石などの科学的証拠に基づいて古生物を復元する芸術作品、
通称、「パレオアート」に特化した日本で初となる大規模展覧会の図録。
チャールズ・R・ナイトとズデニェク・ブリアンといった、
パレオアート界の2大巨匠による恐竜画の数々も掲載されています。
“恐竜図鑑”という展覧会タイトルゆえ、
男の子が好きそうな「小学生の図鑑」的な装丁かと思いきや。
大人向けのシックなデザインで仕上げられていました。
お部屋のインテリアにもなりそうです。
第6位 ジョセフ・アルバースの授業
毎回こだわりの図録を制作しているDIC川村記念美術館。
図録・オブ・ザ・イヤーの常連美術館が、今年も堂々ランクイン。
決して派手さはないですが、
レイアウトや紙の色のチョイスが絶妙で、洗練されています。
まさに、隙のないデザインの図録といったところです。
第5位 私たちは何者?ボーダレス・ドールズ
雛人形に郷土人形、リカちゃん人形、
マネキン、フィギュア、さらには、ラブドールまで。
美術と工芸のボーダーを飛び越える存在である「人形」に着目した展覧会。
展覧会のコンセプトや内容も面白かったですが、
図録でもその面白さが追体験できるようになっています。
担当した学芸員さんの熱量が、
ページを開くごとに、ひしひしと伝わってきました。
この図録が、もう一つの展覧会場であると言っても過言ではありません!
第4位 ねこのほそ道
猫をモチーフにした美術品を紹介する展覧会は、
ここ近年、毎年どこかで開催されているような気がしますが。
豊田市美術館でこの春開催されていた“ねこのほそ道”は、
概念的な意味での、ねこのような現代美術を紹介するという、
なんとも掴みどころのない、一風変わった展覧会でした。
その図録もやはり風変り。
天や小口がピシッと裁断されておらず、布目のような肌触りをしています。
一部で使われている紙もまた風変り。
展覧会の雰囲気をそっくりそのまま体現した図録です。
第3位 みちのく いとしい仏たち
北東北のいとしい民間仏が大集合した展覧会。
その図録も角が丸くなっていて、とてもいとしい見た目となっています。
もちろん、肝心の中身もいとしさのオンパレード。
展覧会を抜きにして(?)、
単純に読み物としても、面白いです。
第2位 倉俣史朗のデザイン
世田谷美術館を皮切りに、富山県美術館、
京都国立近代美術館を巡回する倉俣史朗展の図録。
その表紙は、倉俣史朗の代表作、
《ミス・ブランチ》の脚をモチーフにしているようで。
メタリックな装丁となっていました。
さらに、中身も細部に至るまで、デザインがこだわり抜かれていました。
まるで、倉俣史朗の遺伝子が受け継がれるかのよう。
この図録そのものが、一つの芸術的なプロダクトです。
裏表紙に隠れている倉俣さんの自画像デッサンも良き。
第1位 ポケモン×工芸展
展覧会としても秀逸でしたが、
その図録も秀逸だったのが、ポケモン×工芸展。
天や小口は銀色でメタリックな仕上がりとなっています。
ポケモン×工芸。
ポケモン人気に当てこんだ異色の展覧会と思いきや、
参加作家は、人間国宝から海外で活躍するアーティストまで、一流の工芸作家ばかり。
当然、その作品も美術作品として一級品ばかりです。
さらに、ポケモンという切り口で、美術ファン以外に間口を広げつつ、
工芸の基本情報や魅力はちゃんと伝えている姿勢に感銘を受けました。
アートを一般にわかりやすく広める、とはこういうこと。
自分ももっと頑張らねばと刺激を受けました。
ポケモン情報をQRコードで紹介する心配りにも拍手。
今年の王者に相応しい一冊です。
さて、皆様が推していた図録は、ランクインされていましたか?
それでは、また来年の図録・オブ・ザ・イヤーでお会いいたしましょう!
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