現在、茅ケ崎市美術館で開催されているのは、
“フランシス真悟「Exploring Color and Space-色と空間を冒険する」”という展覧会。
ロサンゼルスと鎌倉を拠点に活動する国際的な美術家、
フランシス真悟さんの国内では初となる大規模な個展です。
展覧会の冒頭を飾るのは、近作の「Infinite Space」シリーズ。
色彩そのものを絵画の主題としたシリーズです。
パッと見は、ただ一色の絵の具が塗られているだけに思えるかもしれません。
しかし、近づいてよく観てみると、
そう単純に作られた絵画でないことがわかります。
実は、このキャンバスの表面には、
半透明の油絵の具が15~20層ほど重ねられているのだとか。
それゆえ、絶妙で繊細な色彩が生まれているのです。
一見すると、シンプルな作品なので、
パッと見て、パッと素通りしてしまいそうになりますが。
作品とじーっと向かい合っていると、不思議なことに、
平面作品なのに、だんだんと奥行きのようなものが感じられてきました。
続いて紹介されていたのは、最新の「Interference」シリーズ。
光干渉顔料という特殊な顔料で描かれているため、
観る角度によって、表情が変化するのが特徴のシリーズです。
なお、一般的に絵画を展示する場合、自然光はNGですが、
「Interference」シリーズは光によっても、表情が変化をするため、
本展に関しては、天井の天窓から自然光が取り入れられています。
観る時間や天候によっても、印象は変わることでしょう。
そういう意味でも、会期中に何度も足を運びたくなる展覧会です。
ちなみに。
「Interference」シリーズの作品は、
昨年の銀座メゾンエルメスでの展覧会でも観ていますが。
今回改めて観たところ、茅ケ崎という土地柄もプラスしたのでしょう、
画面の煌めきから、夕焼けに照らされた湘南の海を連想してしまいました。
脳内で『真夏の果実』が再生されたのは言うまでもありません。
さてさて、展覧会では他にも、
2004年に制作された「Into Space」シリーズや、
05年に制作された「Bound for Eternity」シリーズのうちの1点も紹介。
さらに、新型コロナウイルスの流行により、
ロックダウンされた中で描かれたドローイング群も紹介されていました。
個人的に一番惹かれたのは、「Blue's Silence」シリーズ。
文字通り、青色に特化したシンプルなシリーズです。
こちらの「Blue's Silence」シリーズも、
冒頭の「Infinite Space」シリーズと同様に、
やはり薄い半透明の絵の具が何層にも塗り重ねられているそう。
また、画面の底辺は僅かばかりですが、
全体とあえてトーンが変えられているそうです。
言われてみれば、確かに、微妙に違いました。
肉眼ではそのわずかな差異に気が付けましたが、
こうして画像で観てみると、ほとんど判別がつきません。
人間の眼って、スゴいんですね。
なお、展覧会では、約100点の絵画だけでなく、
スケッチブックなどの資料も一部展示されていました。
それらの中に、父である画家サム・フランシスから貰ったという詩がありました。
自分は普通の親子なので、
人生で一度も父から詩が贈られたことはなし。
さすがは芸術家親子だなァと、妙なところで感心してしまいました。