都内でも屈指のレトロ美術館、弥生美術館で、
現在開催されているのは、“マツオヒロミ展 レトロモダンファンタジア”。
レトロモダンな作風で人気を博すイラストレーター、
マツオヒロミさんの都内では初となる待望の展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
弥生美術館でマツオヒロミさんの作品が展示されるのは、実は今回が2度目。
前回は、大正時代の恋愛事件をテーマにした、
2017年開催の展覧会でコラボを果たしています。
その際の主役は、あくまで大正時代の恋愛事件でしたが。
今回の展覧会の主役は、完全にマツオヒロミさん。
彼女がこれまでに発表した作品や、
その貴重な原画の数々が一堂に会しています。
さらに、目玉と言うべきが、
マツオさんの代表作の一つにして出世作、
『百貨店ワルツ』の世界観を完全再現した展示です。
『百貨店ワルツ』は、1900年代前半頃にあったという設定の、
架空の百貨店「三紅百貨店」をモチーフに描かれたイラスト集。
描かれた女性や、彼女らがまとうファッションの美しさはもちろん、
タイポグラフィや画面全体に漂うトーンのレトロさにも惹きつけられます。
それに加えて、架空のものとは思えない、
まるで実際にありそうな絶妙に作り込まれた設定も。
画面の隅々まで神経が行き届いて制作されているため、
1点1点を観るのに、通常の倍以上の鑑賞時間を要しました。
設定が細部まで作り込まれているといえば、
2022年に発売された『マガジンロンド』の展示コーナーも。
こちらは、「ル・ソレイユ」という名前の架空の古書店という設定。
『少女の友』や『花椿』といった雑誌に混じって、
『RONDO』という見慣れない女性ファッション誌が販売されていました。
さらに、2022年に創刊100年を迎えたという、
『RONDO』のバックナンバーもズラリと並べられています。
時代によって、女性のファッションも違えば、
雑誌のロゴや特集も大きく変化してきたようです。
ちなみに。
こちらが創刊100周年記念号。
そして、こちらが貴重な創刊号の巻頭です。
勘の良い方なら、もうお気づきでしょうが、
『RONDO』という女性ファッション誌は、存在していません。
これらはすべて、マツオヒロミさんが作り出したものです。
そうとわかった上で鑑賞しているのですが、
あまりにも徹底的に設定が作り込まれているため、
だんだんと、本当に存在しているような気になってきます。
というか、コンビニで夜勤をしていた時代に、
『RONDO』を雑誌棚に並べた記憶があったような。
なお、展覧会のラストでは、今月末に発売される予定の、
マツオさん待望の新著『マイ ガーランド』の一部が初公開されていました。
内容は、20世紀のランジェリーの歴史を振り返るというもの。
レトロな魅力も残しつつ、これまでにない表現にも挑戦されていました。
マツオさんの新境地が垣間見えました。
マツオさんの作品自体がもちろん魅力的でしたが、
その彼女の魅力を最大限に引き出せる美術館といったら、
やはり弥生美術館をおいて他にはないでしょう。
そう断言できるくらいに、作風と美術館の相性がバッチリでした。