美術の世界には、奇跡を起こしたヒーローが数多く存在する。
もしも、そんな彼らにヒーローインタビューを行ったなら・・・?
インタビュアー(以下:イ)「放送席、放送席。
こちらには、日本画のモチーフとして、
ごくたまに描かれる菊慈童君に来てもらっています」
菊慈童(以下:菊)「“ごくたまに”とか余計なこと言わなくていいんだよ。
あと、菊慈童“さん”ね。僕のが年上だし」
イ「え?見た目、16歳くらいなのに?」
菊「いや、こう見えて、700歳を超えてるから」
菱田春草 《菊慈童(一部)》
葛飾北斎 《菊慈童》
イ「めっちゃ年上じゃないですか!」
菊「めっちゃ年上なんだよ!」
イ「それは大変失礼いたしました。
改めて、菊慈童さんにお話を伺っていきたいと思います。
普段は秘境にお住まいとのことですが、
何でまたそんなところで生活しているのですか?」
菊「まぁ、自分で言うのもなんだけど、僕って小さい時からビジュアルよくてさぁ。
それで、周の穆王(ぼくおう)に可愛がられていたんだよね」
イ「王に仕えてたんですね!
秘境とは真逆のような場所にお住まいだったんですね」
菊「そうなの。でも、ある日、とんでもないミスをしちゃって。
その罪で秘境に流されることになったというわけ」
イ「それは大変でしたね!で、そのとんでもないミスというのは?」
菊「王の枕を跨いでしまいました」
イ「・・・・・・・・からの?」
菊「いやいや、それだけ」
イ「へ?そんなことだけで、秘境に追いやられるんですか?」
菊「まぁ、そういう時代だったんだよ。今はコンプラ的に問題だろうけど」
イ「コンプラとか、そういうレベルじゃないような気もするけど・・・。
あ、で、それで何で長生きできてるんですか?」
菊「秘境に来てからしばらくしたある日、穆王から枕が届いたのよ」
イ「枕のせいでそんな目に遭ったのに、なぜ、あえて枕を?嫌がらですか??」
菊「違う違う。僕に悪気が無かったことを後で知って、
穆王は僕に申し訳ないって気持ちになられたみたいで。
それで枕の中に、ある経文の一部をそっと忍ばせてくださったのよ」
イ「もう少し気の利いたものをくれたらいいのに」
菊「まぁ、言われてみればそうだけど。
でも、本当にありがたい経文だから、僕はそれを菊の葉に書き写したわけ。
そしたら、その菊の葉から露が滴り落ちてきて!
あまりに美味しそうだから飲んでみたら、不老不死になっちゃったの」
イ「不老不死は単純にスゴいですけど、
秘境の地で永遠に生き永らえるのって、想像を絶しますよね。
ハッピーエンドなのか、そうでないのか、よくわからないエピソードです。
菊慈童さん自身はどう思ってるんですか?」
菊「不老不死とか、永遠の美少年ってイメージのおかげで、
それこそ日本画のモチーフになったり、能の演目になったり。
あとは、『菊水』だっけ?日本酒の名前になったのは、何か誇らしいよね。
たださ、どうせ不老不死になるなら、せめて20歳を超えた後になりたかったよ。
700歳だっていうのに、見た目が16歳だから、
お酒を買う時、毎回、身分証を見せなきゃいけないからね」
イ「それは面倒ですね!
不老不死になるのも考えものですねぇ。
こちらからは以上です。放送席にお返しいたします」
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