世田谷美術館で開催中の “榮久庵憲司とGKの世界 鳳が翔く” に行ってきました。
こちらは、日本デザイン界の巨匠中の巨匠・榮久庵憲司 (えくあんけんじ) さんと、
彼が率いる創造集団GKグループの約60年に渡る活動を紹介する初めての展覧会です。
もし、栄久庵憲司さんやGKデザインの名前は知らなくても、
彼らがデザインしたプロダクトは、日常生活や街中で、必ずや目にしたことがあるはず。
いや、もしかしたら、目にしたことがあるどころか、毎日欠かさず目にしているかもしれません。
例えば、こちら↓
「しょうゆうこと!」 でもお馴染みの (?) キッコーマンの 《しょうゆ卓上びん》 。
実は、この 《しょうゆ卓上びん》 をデザインしたのが、若き日の栄久庵さん。
1961年に発売されて以来、半世紀以上に渡って、
一度もデザインの変更がされていないというデザイン界の歴史の残る名作です。
また、例えば、こちら↓
街中を疾走するYAMAHAのオートバイ (写真は、《VMAX》) 。
男なら一度は跨ってみたいYAMAHAのオートバイの数々も、
栄久庵さんやGKグループによってデザインされています。
他にも、家電やオーディオ製品や日用品のデザインにはじまって、
成田エクスプレスに秋田新幹線 「こまち」 などの交通機関のデザイン、
はては、東京都シンボルマークにJRA (日本中央競馬会) のロゴマーク、都市のインフラまで。
そのデザインの領域は、あまりに幅広く、
むしろ、榮久庵さんやGKグループがデザインしていない領域を探す方が難しい気さえします。
美術展の冒頭で、 《しょうゆ卓上びん》 やヤマハのオートバイはもちろん、
榮久庵&GKグループがデザインしたプロダクトの数々がたくさん展示されていましたが。
これでも、彼らがデザインしたプロダクトの一部に過ぎないというから驚きを隠しきれません。
“このまま美術展の最後まで、榮久庵さんデザインのプロダクトが次々に紹介されていくのかなァ”
と、なんとなく予想しながら歩を進めたのですが、
しばらくして、その予想が、いい意味で裏切られました。
デザインされたプロダクトが、ただただ展示される、
そんな良くも悪くもオーソドックスなデザイン展から一転。
会場の後半では、榮久庵さんによるインスタレーション作品が待ち受けていたのですが・・・
このインスタレーション作品がスゴかったです!!
本当に、スゴかったので、思わず声を (文字サイズを?) 大にしてしまいました (笑)
あまりにインパクトが強すぎて、
前半の 《しょうゆ卓上びん》 やヤマハのオートバイの印象が吹っ飛んでしまったほど。
これまでに、アートテラーとして数多くのインスタレーション作品を目にしてきましたが。
ここまで感銘を受けたインスタレーション作品は、そうそうありません。
漠然とですが、5年後も、10年後も、
このインスタレーション作品で受けた体験は、絶対覚えているだろうなぁという予感があります。
それくらい心に深く刻まれた作品でした。
《道具曼荼羅》 の中央に 《道具千手観音像》 が祀られた・・・
《道具寺道具村構想》 というインスタレーション作品も、なかなかのインパクトがありましたが。
それ以上に強烈だったのが、 《池中蓮華》 というインスタレーション作品です。
(注:写真は、2011年の新宿パークタワー・ギャラリー1でのインスタレーション風景です)
池中蓮華とは阿弥陀経の中の言葉で、極楽浄土にある池に咲く蓮の花を指すのだとか。
そのタイトル通り、空間は、たくさんの蓮の花で埋め尽くされ、
その蓮の池に、美しくメカニカルな蝶や想像上の鳥・迦陵頻伽が佇んでいます。
そして、上を見上げると、そこにもメカニカルな鳳の姿が。
幻想的でスピリチュアルな世界に浸る一方で、
プログラミングされた照明やメカの動きに、人間が生み出した工業や技術の素晴らしさも実感。
空想と現実が、実に絶妙に融合していて、
他のインスタレーション作品とは一味も二味も違う感動を味わえました。
誤解を恐れずに言えば、とても宗教的なインスタレーション作品でした。
「宗教的=うさんくさい」 という意味ではなく。
(今回で言えば、榮久庵さんのデザインの) 思想を、
頭ではなく五感で受け取るという部分が、教会やお寺を想起させました。
仮に、榮久庵デザイン教なるものがあれば、
《池中蓮華》 での体験を受けて、その場で入信してしまっていた気がします (笑)
人によって感じ方は様々でしょうが、
この夏、是非体験して欲しいインスタレーション作品です。
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