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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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ザ・ビューティフル―英国の唯美主義1860-1900

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三菱一号館美術館で開催中の “ザ・ビューティフル―英国の唯美主義1860-1900” に行ってきました。
こちらは、19世紀のイギリスで一大ムーブメントを巻き起こした唯美主義を取り上げた日本初の美術展です。

唯美主義とは、読んで字のごとく、 “唯 (ただ) 、美しい” 美術を追求した主義のこと。
思想よりも、メッセージ性よりも、美しさを最重要視。
もし仮に、そこに深い精神性や寓意が無かろうとも、
「美しくなければ、美術じゃない!」 と唱えた主義です。

例えば、フレデリック・レイトンの 《パヴォニア》 という作品。

パヴォニア


描かれている人物は、神話の登場人物でもなければ歴史上の人物というわけではありません。
ポージングに深い意味があるわけでも、
モデルの衣装や、クジャクの羽根に何か意味があるわけでもありません。
では、なぜ、レイトンは、このような絵を描いたのか。
「ただ美しい絵を描きたかったから。」
それ以上でも、それ以下でもありません。
これが、唯美主義。


今まで、いろいろな美術作品を観賞してきましたが、
唯美主義ほど頭を使わずに観賞することの出来る美術作品はありません (笑)
ただただ美しく描かれたものを、ただただ観るだけ。
「美術ってムズカしい・・・」 「美術ってよくワカラない・・・」 という人にも安心の美術展です。

ちなみに。
唯美主義がイギリスで誕生した背景には、19世紀の産業革命があります。
産業革命により工業品の大量生産が可能になりましたが、
その反面で、美しくない粗悪な工業品が大量に出回ってしまったのです。
そんな世の中を憂い、美術にも人生にも美が重要であると唱えたのが唯美主義者たちでした。
ただの美しい作品の裏には、実は深い芸術観が詰まっているのです。


さて、今回出展されている美しい作品の中で特に美しかったのが、アルバート・ムーアの 《真夏》
ポスターにも使われている今回の目玉作品の一つです。

真夏


この作品が目に飛び込んできた瞬間に、 「オレンジ!」 と心の中で叫んでしまいました。 (←三村風?)
それくらいに、オレンジ色が眩い一枚。
こんなにも美しく印象的なオレンジ色の作品は他にないのではないでしょうか。
ちなみに、こちらの 《真夏》 は、唯美主義が終焉する頃に描かれた作品とのこと。
そう聞くと、このオレンジ色が、消えゆく唯美主義が最後に放った輝きのように感じられました。
美しいけど、どこか切ない。
まるで線香花火のよう。
この 《真夏》 を観るだけでも、三菱一号館美術館に足を運ぶ価値ありです。
星星


《真夏》 以外にも美しい作品は沢山ありましたが。
それらは、特に紹介する必要が無いくらいに、ただただ美しい作品なので割愛。
ここからは、美しさとは別の要素で印象に残った作品をご紹介いたしましょう。

まずは、フレデリック・サンズの 《メディア》
ギリシャ神話ではお馴染みの悪女・メディアを描いた作品なのですが。
美しいというより、超怖い・・・・・・・。

メディア


エリカ様以上に不機嫌です。
なんで、こんなにご機嫌斜めなのかわかりません。
とりあえず、本気で謝っても、しばらくは許してくれなさそうです。
絵の前で、こんなにもビビったのは初めて (泣)


続いては、唯美主義の重要人物の一人オーブリー・ビアズリーにまつわる作品です。
彼自身の出展作品は、 《クライマックス》 を筆頭に、

クライマックス


モノクロで妖しげな美しさを備えた “ザ・唯美主義” なものばかりでしたが。
そんな彼の姿を描いたマックス・ビアボームによる風刺画がヒドい、というか、ムゴい (笑)

オーブリー・ビアズリーの風刺画


悪意あり過ぎ!
針すなお以上に、悪意が込められた似顔絵です。
ビアズリー? 『スター・トレック』 に出てくる人ですよね??


最後に紹介したいのは、 《真夏》 の真向かいに、ひっそりと飾られていた 《月と眠り》 という一枚です。

月と眠り


作者のシメオン・ソロモンは、同性愛の罪で捕まったことのある画家とのこと。
確かに、言われてみれば、まんまボーイズ・ラブです。。。
腐女子必見。




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