出光美術館と言えば、日本最大の仙厓コレクションを誇ることでお馴染みですが。
(昨年の仙厓展の模様はこちらに)
近代日本を代表する陶芸家・板谷波山 (1872~1963) のコレクションも、実は密かに (?)日本最大級!
その数、なんと280件。
板谷波山の地元にある板谷波山記念館よりも多くの板谷波山作品を所蔵しているのだとか。
そんな出光美術館コレクションの中から厳選した波山作品を紹介しているのが、
3月23日まで開催中の“板谷波山の夢みたもの―<至福>の近代日本陶芸” という美術展です。
今回の美術展には、板谷波山の代表的な作品はもちろんのこと、
彼の初期作品から最晩年の作品に至るまで、実に約180件もの板谷波山作品が出展されています。
板谷波山という陶芸家の全貌を明らかにする、またとない美術展だったように思います。
正直なところ、これまで板谷波山については、なんとなく知っているつもりでいましたが。
今回の板谷波山展を通じて、ほとんど何も知らなかったことに気づかされました。 (猛省します)
例えば、板谷波山が東京美術学校の彫刻科の出であるということすら知りませんでした。
そんな彫刻畑出身の彼だったからこそ、薄肉彫という文様が浮き彫りになる独自の技法を生み出せたのでしょう。
《棕櫚葉彫文花瓶》
花瓶の表面をビッシリと埋め尽くした棕櫚の葉の文様は描かれているわけでなく、すべて彫られたもの。
よくぞ手作業で、ここまで・・・と、スゴいと思う反面、少し呆れてもしまう逸品です (笑)
また独自の技法を生み出すだけでなく、
色彩の発色も研究に研究を重ね、ついには葆光彩磁という独自の様式を生み出します。
《葆光彩磁花卉文花瓶》
「葆光」 とは、光を包み隠すという意味だそうで、
文字通り、柔らかいベールで光を包み隠しているような独特な光沢を放つのが特徴です。
有田焼のようなツヤツヤした磁肌もいいですが、
葆光彩磁の磁肌は、朝の爽やかな空気をまとっているようで、どこか自然の優しさのようなものが感じられます。
他にも、色に並々ならぬこだわりをみせた波山の作品が紹介されていましたが。
その中でも個人的に一番惹き付けられたのが、 《朝陽磁鶴首花瓶》 。
波山本人は、この色を朝陽と表現しているようですが。
僕は、この色がパッと目に飛び込んだ瞬間に、 「あっ、オーロラだ!」 と感じました。
朝陽であろうとオーロラであろうと、この神秘的なほどに美しい色の素晴らしさは変わらないです。
また図案として個人的に一番惹き付けられたのが、 《彩磁印甸亜文花瓶》 。
「さいじいんでぃあんもんかびん」 と読みます。
そう、インディアン (=ネイティブアメリカン) の文様をモチーフにした作品なのだとか。
貪欲なまでに、あらゆるものを自身の作品に取り込んでしまう、その姿勢に頭が下がる思いです。
たくさんの作品を見れば見るほど、いかに板谷波山が革命的な陶芸家であったことがわかりました。
現代の僕の目で見ても十分に革命的なので、
板谷波山が作品を発表した当時は、どれほど革命的に映ったことでしょう。
いい意味で、やきものに対する概念が覆される美術展です。
最後に、ちょっと物騒な銘が付けられた作品をご紹介。
《天目茶碗 銘 命乞い》 です。
何とも美しい色合いの茶碗にしか見えませんが。
完璧を求める波山の目には適わず、窯出しの際に割られる運命にあったようです。
その茶碗のピンチを救ったのが、出光美術館のコレクションを築いた出光佐三。
なんとか 「命乞い」 して、この茶碗を求めたのだとか。
何はともあれ、割られなくて良かった。
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板谷波山の夢みたもの―<至福>の近代日本陶芸
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